コラム

2015.7.28

【指導論】岡田彰布氏インタビュー(1) ~見ることも指導者の仕事~

★差別ではなく区別する

――1996年から2年間、オリックスのファームで助監督兼打撃コーチ。98年からは阪神に移り、ファームの助監督兼打撃コーチ、99年からは監督を務めました。「育成」という点で若い選手を見るときに大事にしていたことは何ですか?
岡田 「いかに選手を育てて、一軍に送り出すか。それが、ファームの指導者の仕事。本当はダメなんだけど、全員が一緒というのはないと思っていたね。ドラフト1位と8位では違う、ということ。選手を差別するのではなく区別する。差別はあかんけど、区別するのは構わない。でも、その姿を選手に見せてはダメなんよね。コーチには『こいつは3年経ったら、一軍の戦力になるで』と話していた」

――「3年」がひとつの目安だったりするのでしょうか。
岡田 「そうやね、高卒であっても3年。何でかといえば、同級生が大学で過ごす4年間よりも、1年でも早く一軍でデビューしてほしいから。3年で何らかの形が見えないと、正直厳しいものがある」

――「区別」という意味で、印象に残る選手はいますか。
岡田 「おれが指導者としてオリックスから阪神に戻ったときに入団してきたのが、井川(慶)と藤川(球児)。最初、パッと見た感じでこれは違うなと。具体的に何がというのは難しいけど、ユニホームの着こなしからすべてが違っていたね」

――高校生が入団してきた場合、何を見るんですか。
岡田 「高校のときにどんな練習をしてきたのかを見る。自分なりの練習があるのかどうか。それを知ることで、どういうふうに教わってきたのかわかるもの。コーチに言うのは『教えるなよ』と」


★見ることも指導者の仕事
――「教えるな」ですか?
岡田 「まずは見ること。プロに入ってきたということは、スカウトが何かいいものがあると思って指名をしたわけ。それなのに、いきなり細かく教えてしまうとおかしくなることが多い。それに、はじめから細かく言うても、選手は聞いてないしな。壁にぶつかって、自分からコーチに聞いてくるようになるまで待ってみる。指導者のガマンが必要やね」

――1年待つこともあれば、2年待つこともある。
岡田 「ある。ガマンするのも指導者の仕事やから。今でも思い出すのは、二軍監督の最後の年にPL学園から入ってきた桜井(広大)。2月1日のキャンプを見たときに、ええスイングをしていた。夜のコーチ会議で、『ファームで4番を打たすぞ。守備は目をつむる。バッティングは何も言うな。今のまま打たせて、何かカベにぶつかったらアドバイスをすればいい』と話したんよね。当時はバッティングコーチが2人。こういう話をしたばかりなのに、夜間練習でAというコーチが教えて、さらにはBコーチまで教えている。こんなのは選手を頭でっかちにさせるだけ」

――いい素材だけに教えたくなるのでしょうか。
岡田 「『おれが育てた』と言われたいんやろうね。そのあと、おれが一軍の監督になって、桜井を上げようとしたんやけど、ヒットを打って一塁を回ったときに肉離れを起こしたりがあってな。調子がいいときほどケガをするタイプやったかな」

――特に日本では、つきっきりで教えるのがコーチの仕事というイメージもありますが。
岡田 「もちろん、教えなければいけない選手もいる。それは藤浪(晋太郎)のように、すぐに一軍のローテーションで使えそうなピッチャー。クイックやバント処理など、試合で勝つための細かいプレーを教えていかないといけない」

――なるほど。
岡田 「まったく逆のケースで、こんな選手もおったよ。オリックスのファームにいた関吉雅人と西芳弘。正直、二人とも150パーセント、一軍には行けないレベル。それでも、一軍で教えるようなレベルの高いことをたくさん伝えてやった。本人たちは驚いていたけどね。関吉は砂川北(北海道)、西は寺井(石川)と県立高校出身で、地元ではおそらく英雄。『田舎に帰ったら、プロはこんなにすごいところやったと子どもたちに教えてやれよ』と、伝えてね。せっかく、プロに入ってきたんだから、何かを持って帰ってほしいよな」

――そういう例もあるんですね。
岡田 「ファームの試合やけど、最後に、1番センター西、4番レフト関吉を起用した。二人にカメラを持たせて、守備に就くときに『記念にスコアボードを撮っておけ』と言ってね。すぐにマネージャーにお願いして、実家に写真を送ってもらった。ファームにはこういうこともあるんよね」


★勝てる組織の共通点
岡田 ――さまざまな組織を見てきたと思いますが、勝てる組織の共通点は感じますか。
「それは役割分担やね。ひとりひとりが、自分の役割がわかっている。全員が『おれが打ってやろう』の4番バッターでは、なかなか勝てないよな。どれだけ、黒子に徹する選手がいるか。いろんなことができる選手が多いほど、チームは強い。進塁打やバント。これは、高校野球でも同じやろうね」

――ファームでも同じことが言えますか?
岡田 「ファームは育成が主になるから、違うかな。たとえば、関本。ファームでは3番を任せていて、好きなように打たせていた。やっぱり、まずは打つことから。打てないと、一軍でも活躍ができないからな」

――打てることがあったうえでの小技。
岡田 「そうやね。関本の場合は、一軍が見えてきたときにバントのサインを出していた。一軍ではファームのように打たせてもらえるわけではない。ときにバントも必要になる。そこを考えて、サインを出していた。だから、関本には『お前にバントのサインが出たときは、一軍が近いと思っておけ』と伝えていた」

――一軍と二軍では使われ方が違ってくる。
岡田 「ただ、浜中の場合はファームではバントのサインは出していないと思う。浜中は打つことが求められている。それは一軍でも一緒やと思ったからね」



次回 【指導論】岡田彰布氏インタビュー(2) ~「技」なくして成長なし~
  


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