一歩外に出てみると、スマホを手に持った人ばかり。ポケモンGOは一つの社会現象になったようだ。
大きな公園では、大勢のポケモントレーナーが集結している。座らずに、道端に立ちつくし、数歩歩いては、また立ちつくす群衆は、ものすごく異様な光景だ。
ゾンビ映画が現実になったみたいで少し怖い。だが、僕もそのゾンビの一人になってしまった。
早速アプリをダウンロードすると、野生のポケモンを探しに外を歩いてみた。モンスターボールを投げるのが難しい。
使い捨てのモンスターボールを補充するには、ポケストップと呼ばれる場所に行く。そこでアイテムがもらえる。
どんな場所がポケストップになっているかというと、街の有名なランドマークもあれば、誰も気づかなかったような道端の奇妙なオブジェもある。
ポケモンGOをやった人なら共感してもらえると思うが、このポケストップを探すのがおもしろい。
道におかれた不気味な人形やなんとも形容しがたいオブジェ。一体誰がどんな基準で、このポケストップを選定したのか、大変興味をそそられる。
今ままで日陰者だったオブジェは、急に脚光を浴びることになった。それをうらやむ別のオブジェたちも無数にいそうだ。
毎日のように歩いているはずの道なのに、ポケモンGOをやるまでは気づいていなかった。スマホの画面越しにようやく現実を知る不思議な体験だ。
正確に言えば、視覚には入っていたはずだ。ポケストップになるくらいなので、目に留まる程度には十分に目立つ。
恐らくだが、一度目にしたあと、不要な情報として忘れてしまったのだろう。たとえ視覚に入っても、一旦忘れられた存在は、なかったものとして扱われる。
「なんで今まで気づかなかったんだろう。ポケモンGOおもしろいね。」
そんな連れのつぶやきを聞いた散歩道。スマホの電池切れでそそくさと帰宅した。