米共和党大会 トランプ氏を大統領候補に正式指名へ

米共和党大会 トランプ氏を大統領候補に正式指名へ
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アメリカ大統領選挙で、8年ぶりの政権奪還を目指す野党、共和党の全国党大会が日本時間の19日未明始まり、トランプ氏とインディアナ州のペンス知事を党の正副大統領候補として正式に指名することにしています。
共和党の党大会は中西部オハイオ州のクリーブランドで、18日午後(日本時間の19日未明)に始まり、4日間の日程で行われます。

大会には各州から選ばれた代議員や一般の共和党員など、およそ5万人が参加する見通しで、トランプ氏が掲げる「アメリカを再び偉大にする」をテーマとし、政治家に加え、俳優やスポーツ選手などが演説し、支持を呼びかける予定です。

初日の18日には、選挙戦での事実上の公約となる党の政策綱領の採択が行われるほか、トランプ氏の夫人、メラニアさんらが演説することになっています。党大会で、トランプ氏は党の大統領候補として正式に指名される見通しで、最終日の21日にはトランプ氏が指名を受諾する演説を行う予定です。

しかし、前回の大統領選挙の候補だったロムニー氏や、ブッシュ前大統領などが欠席を表明し、主流派との溝が埋まっていないことも浮き彫りとなっています。

トランプ氏は、下院議員を経験し主流派との調整役として期待されるペンスインディアナ州知事を副大統領候補に起用することを決めていて、党大会を通じて、党の結束をアピールできるかが注目されます。

一方、会場周辺ではトランプ氏に反発する大規模なデモも予定されていて、トランプ氏の支持者との間で衝突が起きないか警察は警戒を強めています。

なぜオハイオ州で?

共和党の党大会が開かれる中西部オハイオ州は、これまでの大統領選挙で、民主党と共和党の支持がきっ抗する接戦州として注目を集めてきました。

1964年以降の大統領選挙ではオハイオ州を制した候補者が大統領に就任していて、とりわけ、共和党では歴代の大統領全員がオハイオ州を制していることから、「ここを落とせば当選はできない」とさえ言われています。

オハイオ州は人口が1100万人を超える全米で7番目に多い州です。人種の構成や産業分布などが全米の平均値に近いことから、「アメリカの縮図」とも呼ばれています。これまでの選挙では民主党は人口の多い都市部で、共和党はそれ以外の地方で強い傾向が出ていて、民主党と共和党がきっ抗してきました。

オハイオ州は、かつて、鉄鋼や重工業が盛んだった地域、「ラストベルト」の一部で、州の北東部は労働者層が多く、自由貿易によってアメリカの製造業が落ち込み、雇用を失ったと感じている有権者もいます。

トランプ氏はTPP=環太平洋パートナーシップ協定によって、「アメリカの製造業は致命的な打撃を受ける」として、TPPからの撤退を明らかにしていることから、TPPへの懸念を持つ有権者への支持を広げる可能性があるとみられています。

共和党としては党大会を開くことで有権者にアピールし、本選挙の鍵を握るオハイオ州を制して政権を奪還したい考えです。

全国党大会とは

民主・共和両党の全国党大会は4年に1度、大統領選挙が行われる年に開催され、11月の大統領選挙に向けて、正副大統領候補が指名されます。

党大会は党の有力者や議員、党員らが集まり、巨大な屋内競技場などで開かれ、期間中の来場者数は数万人に上ります。大会のもようはテレビで全米に生中継され、候補者の主張や党の結束をアピールするうえで最も重要な政治イベントと位置づけられています。

政権の奪還を目指す野党側が先に開くのが通例で、今回の野党・共和党の党大会は通常より1か月ほど早い今月18日から21日まで、中西部オハイオ州クリーブランドで各州から選ばれた2472人の代議員が参加して行われます。

また、民主党の党大会は、翌週の今月25日から28日まで、東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで行われます。

4日間にわたって開かれる大会では経済や外交、移民政策など主要な政策をまとめた事実上の公約である政策綱領の採択をはじめ、大統領候補と副大統領候補の正式な指名などが行われ、最終日には大統領候補が指名受諾演説を行い、最高潮を迎えます。

大会中には党の幹部や若手の政治家などが次々と登壇して、通常、党の団結をアピールしたり、指名候補をたたえる演説を行います。しかし、今回の共和党の党大会にはブッシュ元大統領をはじめ、歴代の大統領や大統領候補などが相次いで参加しない意向を示していて、代わりに元スポーツ選手やトランプ氏の家族などが演説する予定です。

さらに会場の外では、トランプ氏の指名に反対するデモなどが起きる可能性も伝えられていて、異例の党大会になるとみられます。

代議員の投票手続き

トランプ氏は共和党の党大会の2日目となる19日に、全米の各州から集まってくる2472人の代議員の指名投票によって選ばれる予定となっています。

指名投票は各州ごとに行われて、その結果が随時、発表され、ほとんどの代議員はすでに行われている予備選挙や党員集会の結果に従って、候補者に入れることになっています。アメリカABCテレビによりますと、トランプ氏は予備選挙や党員集会で1543人の代議員を獲得しており、過半数の1237人を獲得することは確実となっています。

しかし、トランプ氏の指名に反対する一部の代議員は指名を阻止しようと、共和党の党大会で代議員が各州の予備選挙や党員集会の結果に縛られずに自由に投票できるように党大会の規則を変えようとしてきました。予備選挙などの結果、トランプ氏への投票が義務づけられている代議員の中にも、トランプ氏以外の候補の支持者が少なくないと指摘されていたためです。この規則の変更は、先週開かれた党大会の規則を決める委員会で否決されて実現せず、トランプ氏が規則にのっとり、代議員の投票で正式に指名されるものとみられています。ただ、代議員の中には依然として不満も根強く党大会の行方が注目されています。

国内外から批判 トランプ氏の発言

トランプ氏は、これまでたびたび過激な発言を繰り返し、アメリカの国内外から厳しく批判されてきました。

特に、移民やイスラム教徒を巡る発言が取り沙汰され、去年8月には「メキシコから国境を越えて犯罪が流入している。国境に壁を築き、費用はメキシコに払ってもらう」と述べ、ヒスパニック系の人たちが激しく反発しました。

また、去年12月、西部カリフォルニア州でテロ事件が起きたあとには、「イスラム教徒の入国を禁止するべきだ」と述べ、その後、イギリスでは、トランプ氏の入国禁止を求める署名が多く集まるなど、アメリカ国内にとどまらず、国外でも批判が広がりました。

さらに先月、南部フロリダ州オーランドで49人が犠牲となるアメリカ史上最悪の銃の乱射事件が起きたあとには、みずからのツイッターで、「イスラム過激派のテロについて、自分の主張が正しかったことに祝意のことばが寄せられ、感謝している」と述べ、大きな批判を受けました。

そして、ことし3月にはベルギーで起きた連続テロ事件を受けて、過激派組織IS=イスラミックステートへの対策について、「あらゆることを排除しない。彼らに使うかもしれないと思わせたい」と述べ、戦術核兵器を使う可能性を排除しない考えを示したほか、テロの容疑者には水責めなどの尋問も必要だとの主張もしています。

アメリカの国益を最優先にする「アメリカ第一主義」を掲げているトランプ氏は日本をはじめ、各地にアメリカ軍が展開していることについて、「利益があるとは思わない。アメリカは強い軍事力を持った裕福な国だったが、もはやそうではない」と述べ、日本などに駐留するアメリカ軍の経費について、それぞれの国に全額負担を求める姿勢を示しています。また、NATO=北大西洋条約機構についても、アメリカにとって駐留費用の負担が多すぎると主張しています。

さらに、トランプ氏は日米安全保障条約について、「アメリカが攻撃されても日本は何もしないが、日本が攻撃されたらアメリカは駆けつけなければならず、不公平だ」と述べて、再交渉する考えを示しているほか、「北朝鮮が核兵器を持っている以上は、日本も持ったほうがいいのではないか」と述べ、日本が核兵器を保有することを容認する考えを示すなど、トランプ氏の発言は、さまざまな議論を呼んでいます。

最新の世論調査 トランプ氏とクリントン氏 きっ抗

今月18日から開かれる共和党の全国党大会を前に行われた最新の世論調査では、共和党のトランプ氏と民主党のクリントン前国務長官の支持率がきっ抗し、党大会を前に両者による争いは激しくなっています。

アメリカの政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が出したメディアや大学などによる今月16日までの最新の世論調査の平均値では、クリントン氏がトランプ氏を3.2ポイントリードしています。

クリントン氏が民主党の指名獲得を確実にした先月上旬以降の調査では、ほとんどの調査でクリントン氏の支持率が上回り、中には10ポイント以上リードしたものもありました。しかし、先月中旬からはトランプ氏が追い上げる一方、今月に入ってからはクリントン氏の支持率が下がる傾向にあり、その差は徐々に縮まっています。先週、発表された調査結果は2人の差が数ポイント以内となっているほか、中にはトランプ氏が上回る結果も出ています。

クリントン氏が支持率を下げている理由について、アメリカのメディアはクリントン氏が私用のメールアドレスを公務に使っていた問題が影響しているのではないかなどと分析しています。