チュニジア民主化でノーベル賞受賞団体「テロは世界的問題」

チュニジア民主化でノーベル賞受賞団体「テロは世界的問題」
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チュニジアで対立する政治勢力に対話を促し、民主化に大きく貢献したとして去年、ノーベル平和賞を受賞した団体の代表がNHKの単独インタビューに応じ、フランスのニースで起きたテロ事件について、「テロは世界的な問題だ」として国際社会が一致して協力する必要性を訴えました。
チュニジアの労働組合の連合組織など4つの団体で構成される「チュニジアン・ナショナル・ダイアログ・カルテット」=「国民対話カルテット」は、中東の民主化運動、「アラブの春」のきっかけとなったチュニジアの民主化に貢献したことが評価され、去年のノーベル平和賞を受賞しました。

「国民対話カルテット」の代表4人のうち、3人が来日し、18日、都内でNHKのインタビューに応じました。

この中で、労働組合の代表のアッバースィー氏は今月14日にフランスのニースで大型トラックが群衆に突っ込み、多数の死傷者が出たテロ事件の犯人がチュニジア人の男だったことについて、「チュニジアは国として、テロリストを支援したことはなく、われわれは平和と安定を望んでいる」と述べ、テロは犯人の国籍にかかわらず、世界的な問題だと強調しました。

また、チュニジアからも多くの若者が過激派組織IS=イスラミックステートに参加していることについて、人権擁護団体の代表、ベンムーサ氏は「ISに参加する者の多くが貧困層だ。テロの温床である貧困を撲滅するためにも、日本を含む国際社会の支援が必要だ」と述べ、国際社会に協力を求めていく考えを示しました。

「国民対話カルテット」とは

去年、ノーベル平和賞を受賞したチュニジアの「国民対話カルテット」はチュニジアを拠点に活動する労働組合の連合組織や人権団体などの4つの団体で構成される組織です。

チュニジアでは、「アラブの春」のきっかけとなった「ジャスミン革命」のあと、イスラム派と世俗派が激しく対立し、世俗派の野党の党首や議員が相次いで殺害されるなど民主化は不透明な状況に陥りました。

こうしたなか、2013年に結成された「国民対話カルテット」は政府与野党の仲介役や政治家と市民との対話も進めるなどして、憲法の制定や選挙管理委員会の設置といった民主化に向けた主要な政治日程をまとめたロードマップを作成し、新しい政治体制の確立に大きく貢献しました。こうした功績が評価され「国民対話カルテット」は去年、ノーベル平和賞を受賞しました。

アラブの春のきっかけ「ジャスミン革命」

「ジャスミン革命」とは2011年1月、北アフリカのチュニジアで起きた市民による革命で、中東のほぼ全域に広がった「アラブの春」と呼ばれる民主化運動のきっかけとなりました。

若者の失業率が深刻化するなか、2010年12月、チュニジア中部で、路上で野菜や果物を売っていた26歳の男性が、販売の許可を受けていないとして警察に摘発されたことに抗議して焼身自殺を図ったことがきっかけとなりました。

このあと市民による反政府デモが全土に拡大し、よくとしの1月にベン・アリ大統領がサウジアラビアに亡命、23年間に及ぶ独裁政権が崩壊しました。この革命をきっかけに、市民によるデモは北アフリカやペルシャ湾岸のおよそ20か国に広がり、エジプトやリビアでは長年続いた独裁政権が崩壊し、「アラブの春」と呼ばれる民主化運動となりました。

しかし、「アラブの春」を巡っては、シリアでは外国から武装勢力が侵入し、今も内戦が続くなど、各地で混乱が続いていることからチュニジアが唯一の成功例とも言われています。