ハワイの米太平洋軍司令部には、全世界をいくつかの管轄区域に分けた作戦地図があった。ところが太平洋軍司令部の名称が「インド・アジア・太平洋軍司令部」に、作戦区域が環太平洋だけでなくインド西部やインド洋にまでいつの間にか広がった。「ハリウッドから(インドの)ボリウッドまで、ホッキョクグマからペンギンまで」というスローガンもある。この地域で米軍のちからが及ばない場所は事実上中国と北朝鮮だけだ。
米国は最近、韓国、日本、オーストラリアと共に東南アジア諸国連合(ASEAN)、インドをアジアの安全保障における5大パートナーと位置づけている。昨年末と今年初め、太平洋軍司令部が主管する空軍演習には韓国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、フィリピンなどが参加した。今年春には米国、インドが合同で空軍演習を実施した。
司令部幹部は「各国との軍事安全保障ネットワークを構築することが目標だ」と述べた。そして、全ての変化は中国を標的としている。米国側の関係者もあえて「中国包囲網」を否定はしなかった。最近米大統領選のヒラリー・クリントン陣営の関係者と会った安全保障専門家は「北朝鮮の核に対する対応がさらに強まり、中国に対してもそう簡単にはいかないムードだ」と述べた。北朝鮮には軍事的対応策、中国には攻勢的封鎖戦略を検討していくことを意味している。
韓国に対しても米国はアジア新安全保障ネットワークに加わるよう手招きしている。終末高高度防衛ミサイル(THAAD)はその試験台となる。米国は韓国にあるアジア最大規模の平沢米軍基地を維持するため、THAADが必須だとみている。韓米が共同ミサイル防衛網に入る意味合いもある。THAADが中国のミサイルを監視するかどうかは二の次だ。