賢者の知恵
2016年07月23日(土) 鈴木哲夫

安倍官邸は、これからの野党共闘にとてつもない焦りを感じている~「年内解散」を急ぐ本当の理由

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【PHOTO】gettyimages

片山さつきの「危機感」

参院選は、本当に与党の「圧勝」だったのか。実は、野党は統一候補戦略に手応えを感じており、次の衆院選でも候補を統一すべく動いているという。

「そうなると、与党は最大で70議席を失う可能性がある」との声も出る中、安倍官邸内には野党の結束が強化される前に、衆院選を実施すべきとの構想が浮上している。

無論、その先に見据えるのは憲法改正だ――。政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏の特別リポート。

参議院比例、自民党で3位の得票で当選した片山さつき氏。彼女の強さは、「一か所ではなく全国各地からまんべんなく票を集めていること」(自民党選対幹部)にあるという。たとえば、その地域の出身だからとそこから集中的に票を獲ろうとすると、油断も生まれ運動量は減り、総得票は伸びないことが多いという。

片山氏は、それを知る議員の一人だ。全国から票を獲るためには、細かく、足繁く、全国を渡り歩かなければならない。だから片山氏は「首長選挙があると聞けば、どんな小さな自治体でも事前に情報を仕入れて応援に行く。そんなことを日ごろから実践している」(前出幹部)という。裏を返せば、全国の有権者の反応や、自民党への風を他の自民党議員よりも機敏に感じている一人だということだ。

今回の参院選後、あるテレビ番組で私は片山氏と会った。メディアが「与党圧勝」と騒ぐ中、私が「果たしてそうなのか。1人区などは苦戦したのではないか」と聞くと、片山氏は「全国を回ってきましたが、おっしゃる通り」と頷いた。彼女は、自民党へ吹き始めている逆風を感じ取っていたという。

また、参院選が終わった翌日の月曜日の朝。選挙では常に圧倒的な強さを見せる東京選出の自民党議員・菅原一秀前財務副大臣が、選挙区内の駅頭でマイクを手に立っていた。

「参院選でのご支援ありがとうございました」

彼は、参院選で当選したわけではない。衆議院議員だ。その彼が、選挙の翌日に街頭に立っている。参院選で自民党を支援した人へのお礼のあいさつかと思いきや、演説は自分自身の、あるいは、自民党の政策的な話だった。安倍政権が公約で示した景気対策、子育て支援、介護などを必ず実現して行く、とそのタイムスケジュールと約束を訴えていたのだった。

驚くことに菅原氏は、1週間が過ぎた今も、毎朝駅頭に立っている。参院選に勝利して多少は気を抜いてもよさそうなこの時期になぜそこまでやるのか――。私がそう問うと、

「参院選は本当に与党の圧勝だったんでしょうかね。私はむしろ危機感を持ちましたけどね」

という答えが返ってきた。選挙区を常日頃から徹底して回っている彼は、世論には鋭敏だ。

「マスコミは改憲勢力で3分の2を獲ったのだから圧勝だと報じていますが、一方で1人区で11も落とした。共産党と民進党の協力がうまく行くはずがないとタカをくくっていましたが、野党協力をナメてはいけなかった、ということです。落ちた現職大臣二人も、安倍政権の重要な政策の柱の『沖縄』と『原発』を担当する二人ですからね。勝った勝ったと緩んでいたらしっぺ返しを食います」

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