眠る時に突然ビクッとする「入眠時ぴくつき」 なぜ起こる?
夜ベッドに入って眠りに落ちる時、突然落下する感覚に襲われてビクッとする現象、通称「入眠時ぴくつき」。経験したことがある方も多いと思いますが、これは一体なにが原因で起こるのでしょうか。現在では2つの説が有力とされているようです。
- シリーズ
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SciShow 2016年5月21日のログ
- スピーカー
- Michael Aranda(マイケル・アランダ) 氏
眠る時に「ビクッ」とするのはなぜ?
マイケル・アランダ氏 眠りに落ちる静かな夜、突然落下する感覚に襲われてビクッとしたことはないですか? これは一体なんなのでしょうか。
「入眠時ぴくつき」と呼ばれるこの現象は、眠りに落ちる時に起こります。夢の世界に入る瞬間に、腕や足、時には体全体の筋肉が、勝手に引きつってしまうのです。
だいたい70パーセントほどの人が、寝る時に経験するそうです。ではこの「入眠時ぴくつき」はどうして起こるのでしょうか。
これには、神経科学に基づいたものと、進化に基づいた2つの説があります。
もっとも一般的な説は、眠りにつこうとする際に脳では2つの神経系統が競合している、というものです。
1つ目の系統は、網様体賦活系と呼ばれる、神経細胞の集合体です。シワシワで大きな大脳皮質の下にありますが、この網様体賦活系は意識がはっきりしている時は活発になり、体は覚醒状態となっています。
2つ目の系統は、VLPO(腹側外側視索前野)と呼ばれる、視神経の近くに位置する睡眠サイクルを司るものです。そのためにVLPOは「睡眠スイッチ」と言われることもあります。
毎晩眠る時や、昼寝をする時はVLPOが網様体賦活系より優勢になります。こうした別の神経系への引き継ぎが起こる際に、まだ活動している脳の部位が筋肉に刺激を送ってしまい、ぴくつきの原因となるのです。
入眠時ぴくつきは、網様体賦活系が体をコントロールし続けようとする最後のあがきとも言えますね。
程度の差はあれ、1つ目の神経系が主導権を2つ目の神経系であるVLPOに引き渡し、入眠時ぴくつきは収まります。
つまり、入眠時ぴくつきは、眠ろうとする時に起こる睡眠と覚醒のせめぎ合いの結果だと考えられています。
もう1つのそれほど一般的でない説は、私たち霊長類の祖先に関係しているものです。古代の霊長類は、リラックスし眠り始める際に木から落ちる危険があったのでは、と考える研究者もいます。
入眠時ぴくつきは、素早く目をさますことで落ちてしまわないよう素早く行動するためだ、というのです。つまり筋肉のビクつきは、長年の進化によって形成されたものだというのです。
入眠時ぴくつきの原因がなんであれ、心配する必要はまったくないと、たいていの専門家は言います。それでも、ビクッと突然目を覚ましたり、落下して死にそうになる感覚を味わいたくないなら、寝る前には控えておくべきことがあります。
カフェインをたくさん摂る、夜に仕事をする、ストレスを抱える、睡眠不足といったことが、びくつきの頻度や程度を大きくしてしまいます。ですから、コーヒーを減らし、午前中に仕事をし、ストレスと睡眠をコントロールすれば、入眠時びくつきを減らせるでしょう。
でもさっきも言ったように、危険があるわけじゃありません。気にならないのであれば、午後のカフェラテを我慢する必要はないでしょう。
結局は、ぴくつきを恐れるよりも仕事をこなす必要があるのですから。