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【社説】

ポケモンGO 思いやりもゲットだぜ

 世界で大ブームのスマートフォン用ゲーム「ポケモンGO(ゴー)」が日本で配信を始めた。街中を移動しながら遊ぶ点が新しいが事故も心配である。それにもまして他者への配慮が必要だ。

 「ポケモン、ゲットだぜ」−利用初日から日本のあちこちで、原作を元にしたアニメ「ポケットモンスター」に登場する、この決めぜりふがこだましたことだろう。

 たかがゲームである。されど、すでに利用が始まった三十カ国以上では見過ごすことができないほどの社会現象となっている。米国では開始から一週間で利用者が六千五百万人を超える爆発的なヒットとなる一方、歩きスマホに夢中になりすぎて崖から転落したり、強盗に遭うなどの事件も起きた。

 ほかにも原発の敷地内や地雷原など立ち入り禁止の場所や、ホロコースト博物館といった、およそゲームに興じる場でないところ、民家近くや私有地に利用者が入り込む例が後を絶たない。

 それはスマホの画面を見ながら街のあちこちを歩き回り、ポケモンを探し出すためだ。人気の秘密はスマホの位置情報機能や、現実の映像にアニメ画像などを合成できる拡張現実(AR)といわれる技術を活用し、まるで目の前にポケモンが出現するような感覚が味わえる点にある。

 これまで拡張現実といえば、北欧家具大手がカタログ商品の家具を自宅の部屋に置くイメージ画像を提供するなど、ごく一部にしか生かされてこなかったのである。

 「ポケモンGO」は米国でレストランなどの集客手段として活用されているほか、意図せざる効果として、引きこもりがちな若者らの運動促進やうつ病患者らのメンタルヘルス改善を期待する声も聞かれる。

 五年後、十年後に振り返ってみて、このスマホ向けゲームは、期待されたほど普及してこなかった拡張現実の転機となっているかもしれない。あるいは可能性を広げたことになるかもしれない。

 それはひとえに新しいゲームの利用者が安全に楽しみ、また他者に迷惑を及ぼすことがないかにかかっている。

 政府や学校関係者が警告するのは、歩きスマホや自転車、自動車運転中の禁止、駅や水辺、崖付近での利用禁止、病院や宗教施設での自粛、混雑場所での注意、個人情報の管理などである。事業者側に、安全やマナー向上への努力義務があるのはいうまでもない。

 

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