■「THAAD無用論」をあおる意図も
19日に北朝鮮がスカッドとノドン・ミサイルを発射した背景には、「THAAD無用論」をあおる狙いもあると分析されている。北朝鮮はスカッドをおよそ600発、ノドン・ミサイルをおよそ200発保有しているという。韓国の一部では「スカッドは飛行高度が低く、飛行時間が短いので、THAADで迎撃は困難」「迎撃ミサイルが48発しかないTHAAD1ユニットでは、北朝鮮のミサイル1000発を全て防ぐことはできない」と、「THAAD無用論」も叫ばれている。
これに対し、韓国軍の関係者は「射程100-200キロのスカッドAは高度が低く、迎撃は難しいが、スカッドB・C(射程300-500キロ)は迎撃可能」「なぜ、韓国が1000発全て食らうとしか考えないのか。THAADが配備されれば、パトリオットと合わせて多層迎撃システムが構築されるので、北朝鮮のミサイルを効果的に防ぐことができる」と語った。THAADの迎撃可能高度は40-150キロ、パトリオットの迎撃高度は10-40キロとなっている。この関係者は「韓国が本格的な反撃に乗り出すまで時間を稼ぐのが、THAADの役割」と語った。
逆説的に、THAADを狙った北朝鮮の挑発が、THAAD配備の正当性を強化しているという分析もある。峨山政策研究院の崔剛(チェ・ガン)副院長は「北朝鮮のミサイルの脅威に対応する上で、THAAD配備が何の効果もないなら、北朝鮮がすぐさまこんな行動(韓国に対する脅迫とミサイル発射)を取る必要はない」と語った。
■偽装平和攻勢が受け入れられず、またも「強攻策」
北朝鮮は、今年5月に開いた第7回労働党大会の後、しばらくは南北軍事会談の提案など平和攻勢を展開していた。金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長の側近、リ・スヨン党中央委副委員長を中国に派遣するなど、伝統的友邦との関係改善にも力を入れた。しかし、韓国をはじめとする国際社会が「非核化に向けた真剣さなしには、制裁緩和や画期的な関係改善は困難」という態度を見せると、またも本性を現した格好だ。安全保障部局の関係者は「北朝鮮は、THAAD配備や南シナ海問題などで米中が衝突する隙に、5回目の核実験や長距離ミサイルの発射を強行する可能性がある」と語った。