北朝鮮が19日に行った「弾道ミサイルによる武力の誇示」は、予見されていた行動だった。韓米が高高度防衛ミサイル(THAAD)配備を公式発表してからわずか三日後の11日、北朝鮮は総参謀部砲兵局名義の「重大警告」で「THAADシステムが南朝鮮に居座る位置が確定したら、われわれの物理的対応措置が実行されるだろう」と脅していたからだ。
韓国政府の当局者は「北朝鮮による武力の誇示は、韓国に戦争の恐怖感を植え付け、THAAD配備反対の世論を増幅させるためのものなのだろうが、逆にTHAAD配備を正当化している」と語った。外交関係者の間からは「THAAD配備に反発する中ロが『北朝鮮抱き込み』に乗り出すこともあり得るという見方が出る中で、北朝鮮は『自殺点』を入れ続けている」という声も上がった。
■「南のどこであろうと攻撃可能」ということを見せつける
19日に北朝鮮がミサイルを発射した黄州から星州までは、直線距離でおよそ350キロ。この日、北朝鮮の弾道ミサイルは500-600キロ飛んでいることから、星州に向けて撃ったとすると、星州を越えて釜山や蔚山のあたりに落ちると推定される。しかし北朝鮮には、ミサイルの燃料を調整したり発射角度を高くしたりするなど、星州を攻撃できる方法はいくらでもある。この日、3発目に発射したとみられるノドン・ミサイルが、最大射程(1300キロ)の4割程度しか飛んでいないことも、「高角発射」の可能性を後押ししている。黄州よりも後方から撃つことで星州を狙うこともできる。ミサイル発射場がある咸鏡北道舞水端里から星州までは、およそ540キロ。安全保障部局の関係者は「北朝鮮は19日、『南朝鮮用』と呼ばれる中・短距離ミサイル3発を、少しずつ違うやり方で撃ったらしい。『THAADを配備したら、星州だけでなく南朝鮮全域が攻撃圏に入る』という脅迫状をよこしてきたということ」と語った。