■がん患者の5年生存率6割 早期発見で少し向上 [健康ダイジェスト]
国立がん研究センター(東京都中央区)は7月22日、2006年~2008年にがんと診断された患者を対象として追跡した5年生存率を発表しました。5年後に生存している割合を示す5年生存率が高いほど、治療で命を救える効果があり、5年が治療や経過観察の目安といわれています。
全部位では、男性59・1パーセント、女性66・0パーセント、男女計62・1パーセントで、前回(2003年~2005年)比はそれぞれ3・7ポイント、3・1ポイント、3・5ポイント上昇となりました。
同データは、都道府県が行う「地域がん登録」データを活用して算出されたもので、今回の集計期間には27府県が参加し、そのうち国内精度基準を満たした東北から九州までの21県の64万4407人の情報に対して、全部位と部位別、臨床進行度別、年齢階級別5年生存率について集計を行いました。
全部位の5年生存率については、前回集計の男女計58・6パーセントと比較して向上していますが、2006年~2008年の罹患状況を踏まえると、前立腺がんや乳がんなど予後のよいがんが増えたことなどの影響も考えられるため、国立がん研究センターは「治療法の改善などが影響しているとはいえない」としています。
また、部位別で5年生存率が高かったのは、甲状腺の93・7パーセント、皮膚の92・4パーセントで、5年生存率が低かったのは、膵臓(すいぞう)の7・7パーセント、胆のう・胆管の22・5パーセント、肺の31・9パーセント、肝臓の32・6パーセントでした。
部位別に5年生存率が高い(70~100パーセント)群を男女別にみていくと、男性では、前立腺が97・5パーセントと最も高く、皮膚の92・2パーセント、甲状腺の89・5パーセント、膀胱、喉頭、結腸、腎・尿路(膀胱除く)と続き、女性では、甲状腺が94・9パーセントと最も高く、皮膚の92・5パーセント、乳房の91・1パーセント、子宮体部の81・1パーセント、喉頭、子宮頸部、直腸と続きました。
一方、部位別に5年生存率が低い(0~39パーセント)群を男女別にみていくと、男性では、最も低いほうから膵臓7・9パーセント、胆のう・胆管、肺、脳・中枢神経系、肝および肝内胆管、食道、多発性骨髄腫、白血病、女性では、最も低いほうから膵臓7・5パーセント、胆のう・胆管、肝および肝内胆管、多発性骨髄腫、脳・中枢神経系でした。
どの部位でも、一様に臨床進行度が高くなるにつれ、生存率が低下しており、多くの部位では、早期で診断された場合には生存率が良好であることがわかりました。また、おおむね加齢とともに生存率が低くなる傾向がみられましたが、若年者より高齢者の生存率が高い部位や、年齢と生存率との相関がはっきりとみられない部位もあったといいます。
国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は、「治療法が改善され、検診で早期発見ができるようになった」と分析しています。例えば、白血病で新しい薬が治療に導入され、肝臓がんでは局所療法に効果が出ているといいます。
若尾さんは、「大腸がんや肺がん、乳がんでその後に分子標的薬や新しい抗がん剤が登場しており、次の集計ではさらに生存率の向上が見込まれる」と話しています。
医学博士の中原英臣・山野医療専門学校副校長は、「昔はレントゲンという1枚のフィルム写真でがんを探したが、今は画像診断、例えば、MRI(磁気共鳴画像装置)、CT(コンピュータ断層撮影)、PET(陽電子放射断層撮影)で立体的に撮影し、検査できる。その結果、1センチ未満の小さなものでも発見できるようになったのが大きい。近い将来、5年生存率ではなく、10年生存率が基準になるだろう」と指摘しています。
2016年7月23日(土)
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