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露の薬物問題 IOCは厳しい対応を

 公正な競争を阻むドーピング(禁止薬物使用)は絶対に許さないというメッセージが込められた裁定だ。

     国の組織的関与が認定されているロシアのドーピング問題でスポーツ仲裁裁判所(CAS)は、ロシアの陸上選手がリオデジャネイロ五輪に参加することを禁止した国際陸上競技連盟(IAAF)の決定を支持する裁定を下した。

     国ぐるみのドーピングと隠蔽(いんぺい)工作が行われたのは陸上だけではない。

     先に世界反ドーピング機関(WADA)は、夏季競技や冬季競技だけでなく、パラリンピックでも検体をすり替えるなどの不正工作が行われていたとする報告書をまとめ、リオ五輪とパラリンピックへの「ロシア選手団の参加を全面的に拒否することを検討すべきだ」と勧告した。

     国際オリンピック委員会(IOC)はWADAの勧告とCASの裁定を重く受け止め、ドーピング撲滅を大きな目標として掲げる組織として厳しい対応をすべきだ。

     報告書によると、スポーツ省が主導し、治安維持を担当する連邦保安庁や反ドーピング検査機関などが関与した。ロシア勢が不振に終わった2010年バンクーバー冬季五輪以降に体制が構築され、プーチン首相(当時)が指名した副スポーツ相が中心的な役割を果たした。

     ドーピング問題でロシアは一貫して組織的な関与を否定し、「違反の責任は個人が負うべきで、潔白な選手を巻き込むのは人権侵害だ」と主張してきた。WADAの勧告を受け、プーチン大統領は「スポーツへの政治介入だ」と反発している。

     国家が主導するロシアの強化システムの中で代表選手たちがドーピングを拒否するのは可能だろうか。五輪は国同士の戦いの場ではない。身の潔白が証明できる選手はロシア選手団としてではなく、個人の資格で参加すればいい。

     ロシアは14年ソチ五輪開催のために多額の資金を投入するなどスポーツを国力誇示の手段として利用してきた。昨年11月に問題の根深さが明らかになって以降も検査逃れなどの違反が相次ぎ、「勝つためには手段を選ばない文化」(WADA)を変えようという姿勢はうかがえない。

     IOCがロシアの参加を認めない決定をした場合、リオ五輪の商業的な価値は低下するかもしれない。だが、禁止薬物の力に頼ったロシア選手たちによって、クリーンな他国の選手たちが不公正な競争に敗れ、勝利を奪い取られたという事実を忘れてはならない。

     IOCが報復を恐れて妥協すれば、スポーツそのものへの信頼が損なわれ、近代五輪に負の歴史が刻まれることになるだろう。

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