最古級、7世紀木簡か 法隆寺献納宝物に
東京国立博物館は22日、所蔵する「法隆寺献納宝物」の中から、7世紀にさかのぼる可能性の高い木簡が見つかったと発表した。出土品ではなく、保管されてきた伝世品としては最古級。寺院の運営、生活の様子を知る資料という。8月23日〜9月19日、同館で公開する。
奈良文化財研究所との共同調査で、先月8点を確認し、うち4点から文字が読み取れた。そのうち1点(長さ約30センチ、幅約3センチ)の表面には「月生十五日売俵十一得直七秤□五※其□」と書かれ、物品売買の記録とみられる。月初めを意味する「月生(つきたちて)」、「※」という単位など、時代が下る奈良時代には見られない用語が使われ、書風も古かった。
ほか3点は尼僧の名や行事での役割を記したもの、漢文学習に使ったものなどが確認された。調査にあたった奈文研の渡辺晃宏・史料研究室長は「日常の調達など、当時から寺院のさまざまな場面で木簡が使用されていたのが分かる」と話す。
「宝物」は奈良・法隆寺に伝来し1878年、皇室に献納されたもの。木簡は加工され、仏教儀式で用いた細長い旗「幡(ばん)」の芯板に転用されたため残った。これまで伝世品で最古の木簡は8世紀の奈良・正倉院の例があり、出土品では前期難波宮(大阪市)の例など、630年代ごろのものが最古とされる。【最上聡】
東野治之・奈良大学教授(日本古代史)の話 一般的に幡の芯板には新材の立派なものも多く、廃棄木簡が使われたのは質素な幡だろう。法隆寺には古く中宮寺の文化財が移されており、尼関係の木簡の存在を考慮すると、全てが法隆寺のものとは限らず、中宮寺伝来品も含まれるだろう。
※はのぎへんに「丸」