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孤高の凡人

Anarchy in the 2DK.

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仏門GO

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夏の暑い日差しの中、私は傾いていた。

その角度は生と死を隔てる絶妙な角度であり、私の命はグラム単位のバランスによって保たれていた。

右、左、どちらに動いてもゴローンして死ぬ。

死と隣り合わせの緊張感はから冷や汗が止まらず、私の背中はベトベトンになっていた。

 

私はコイキングを探していた。

 

私は2級河川の側道をライトなバンでGOしながら、川を見つめてコイキングを探していたのだ。

小学生時代から魚釣りを趣味とし、20年近く魚影を追い続けた私は、目が進化、流れの中を優雅に泳ぐ鯉、似鯉、鯰、黒鱒などを見つける事ができるようになった。

googleマップを使い、マイナーな川を辿る。

誰も来ないような川を見つけ出し、そこでゆっくりと糸を垂れるのが私の精神を癒す唯一の方法であった。

その日も私の下でカラカラガラガラと音を立てる、擦り減ったブリジストン。

夏の無邪気な子供が走るのとほぼ同じ速度で私はコイキングを追っていた。

その寸法はギャラドスと言っても過言ではなく、是が非でも私はあのコイキングをゲットしたかったのだ。

 

私は夢中になっていた。

 

優雅に私の先を泳ぐコイキングの姿に夢中になっていたのだ。

 

突如、ズバットとブリジストンが回転を止め、キャタピーがゴルダック。私の車は脱輪した。

 

視界からはコイキングが消え、川の底が見える。

私のタマタマは縮み上がった。

 

私はアクセルを強く踏んだ。

 

しかしブリジストンはトサキントしたままであった。

 

困った。コラッタ。

 

車から降り、その傾き具合を目をマルマインして見ていると、向こう岸から三人のおっさんが歩いてきた。どうやら国道沿いの精肉店、サワムラ精肉店の人達のようだ。

「脱輪したんか」太い声の男が言った。

その体格は6尺近くあり、私はそのカイリキーの応援にラッキーと思った。残りのポッポとカモネギみたいなおっさんは役に立つとは思えないので精肉してしまいたかった。

私はカイリキーの指示で再び運転席へ戻った。

作戦はこうだ。

カイリキーと精肉チキンズでライトなバンを押し、私がアクセルを踏む。

完璧である。絶対イケる。

 

ゲンガァァッ!

力強い叫びと共に車体が揺れる。

私は勢いよくアクセルを踏んだ。

 

 

ドガース。

 

 

私の視界の先には崖。

さらにズバット切り込んだその鋭角は、私の心臓とタマタマをスリーパーした。

 

冷や汗がベトベトン。

 

動けぬ。少しでも動けばこの崖をゴローンして死ぬ。

 

「こらJAF呼ばなあかんな」太い声のカイリキーと精肉チキンズがそう言い放ち、笑いながらサワムラ精肉店へと帰っていく。

 

死と隣り合わせの緊張感の中、私はピッピとスマホを操作し、JAFを呼んだ。

 

到着まで約40分。

ゆっくりと揺れる車内で、夏の陽射しにファイヤーされながら、汗でベトベトンになった。

JAFが来るまでの40分、暑さと恐怖でカラカラに乾いた喉とバトルしながら、私はいつまでも、いつまでも体をフリーザーしていたのだった。

 

 

 

ポケモンを探し、スマホに気を取られた結果、崖から滑落してあの世へGO。

赤信号に気づかず車道へGOしてダンプに跳ねられあの世へGO。

全身に模様の入った人に激突して、事務所へGO。

このような事が懸念されるポケモンGOが日本で配信された。

私のようによそ見をしていた事により、国外では既に死者も出ているようで、この社会現象はおそらく我が国でも死者を出すであろう。

自業自得と言えばそれまでであるが、そのような事故でお亡くなりになった方の魂が無事、極楽浄土へ行けるように、私は仏門に入り、彼らを供養しようと思う。

 

仏門GO。

 

南無妙法蓮華経。

 

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