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まるで“恐怖政治” 自民党が密告サイトを開設〈週刊朝日〉

dot. 7月22日(金)7時0分配信

 何を期待しているのか。恐怖政治さながらだ。

 自民党がホームページで、学校教育で「政治的中立を逸脱するような不適切な事例」として、教師の政治的な発言の“密告”を求めている。「いつ、どこで、だれが」など具体的な情報の記入欄がある。

 党文部科学部会長の木原稔衆院議員はツイッタ―でこう呼び掛ける。

〈18歳の高校生が特定のイデオロギーに染まった結論に導かれる事を危惧してます〉

 一方で、神奈川県の30代教諭は不安そうに語る。

「現場の教師を萎縮させる効果は十分です。いまや、生徒に対してばかりか、職員室でさえ政治の話をしづらい空気になっている」

 当初掲示した文面は中立を逸脱した例示として「子供たちを戦場に送るな」と主張する教員を挙げていた。ネット上で批判され、「安保関連法は廃止にすべき」と例示を書き換え、さらに本音を露呈。その文言も削除するハメになった。

『戦前回帰「大日本病」の再発』などの著書がある、戦史研究家の山崎雅弘氏が厳しい口調で指摘する。

「狙いは、批判的な意見の者を服従させるため、恐怖心を植えつけることです」

 メディアに対し、スポンサーの圧力や放送法をチラつかせたのと同じ手口だ。

「ある法案に賛成と反対の意見を半々に報じるのが中立かのように言い募るが、それは誤り。多くの憲法学者から違憲と判断された安保法制を強引に通す、政権与党のルール違反を厳しく批判することこそ政治的中立です」(山崎氏)

 教育法に詳しい中京大国際教養学部教授の大内裕和氏はこう語る。

「教育基本法14条は、政治的教養の尊重を謳う。18歳選挙権導入で、教師が政治の現状を学ばせる必要性は高まっている。学校で安保法制や沖縄の基地問題をきちんと教えるべきです。自民党は自由で民主的な社会の基盤を揺るがしている」

 今回のサイトは、なりすまし、でっち上げなども考えられる。元文科省審議官で京都造形芸術大教授の寺脇研氏が呆れながら言う。

「政党助成金をもらい、国政調査権を持つのに、自分たちで事例を調べようとしないで事実関係が不確かなたれ込みを集めてどうするのか。中身の問題以前にあまりにお粗末。議員のレベル低下を天下にさらした」

 木原衆院議員に取材を申し込んだが、期日までに機会を得られなかった。(本誌・松岡かすみ、太田サトル、鳴澤大、亀井洋志、吉崎洋夫/黒田朔)

※週刊朝日 2016年7月29日号

最終更新:7月22日(金)7時0分

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