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【社説】

トランプ氏指名 どこへ行くのか共和党

 八年ぶりの政権奪取に向け、結束を誇示するはずの舞台が、逆に深刻な亀裂をさらけだしている。米大統領選候補にドナルド・トランプ氏を指名した共和党大会だ。共和党は岐路に立たされている。

 党大会はブッシュ前大統領ら有力者の相次ぐ欠席に加え、反トランプ派の異議でたびたび議事が中断した。

 そんな中で採択された政策綱領は、不法移民対策でメキシコ国境での「壁」の建設を支持。トランプ氏が主張した「イスラム教徒入国禁止」は明記しなかったものの、テロ関係地域からの外国人の入国には特別審査を行うことを盛り込み、排他的な色彩が濃い。

 一方、社会問題では、最高裁が認めた同性婚を否定▽人工妊娠中絶手術への助成禁止▽同性愛者へのサービスを拒否する店の保護−など保守色を前面に出した。

 党の枠に収まらないトランプ氏の主張をくみ取ることと、保守派つなぎとめを図ることの両立に腐心した跡がうかがえる。

 だが、米紙ニューヨーク・タイムズが社説で「記憶する限り、最も過激な政策綱領」と批判するように、こうした少数派排除の主張は、党の将来に背を向けるに等しい。

 共和党は二〇一二年の前回大統領選の主な敗因を、ヒスパニック(中南米)系など少数派の取り込みに後れを取ったと総括した。

 ピュー・リサーチ・センターの調査によると、今ではヒスパニック系有権者は全体の12%ほどを占め、黒人と匹敵するほどまでその存在は大きくなった。

 非白人系の人口は今後も増え続け、米国勢調査局の推計では、二〇六〇年には白人の人口比率は43%まで落ち込む。

 共和党は前回選挙の教訓を忘れてしまったのだろうか。

 近年、共和党は、時には民主党とも妥協を図る柔軟な主流派と、強硬な保守派との激しい党内抗争に明け暮れ、方向性が揺らいでいた。そこにトランプ氏のような異端が現れたことで、混迷が一気に深まった。

 共和党とは、いったいどういう政党なのか?

 その答えが見つからず、右往左往する印象を今の共和党は抱かせる。アイデンティティーの危機という指摘もある。

 共和党も変革を迫られている。目先の大統領選だけでなく、将来を見据えた党のビジョンを描く必要があるのではないか。奮起を期待したい。共和党あっての二大政党制なのだから。

 

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