文/辻田真佐憲(近現代史研究者)
広がり続ける音楽と政治の問題
7月22日から24日にかけて、フジロックフェスティバルが新潟県の苗場スキー場で開催される。同イベントをめぐっては、同月16日にSEALDsの奥田愛基の出演が発表されて以来、「音楽に政治を持ち込むな」とネットで大きな話題になり、マスメディアでも取り上げられた。
騒動の発端は、単にひとりの政治運動家に対する忌避感にすぎなかったのかもしれない。ただ、ここまで大事になったのは、音楽と政治の関係という重要な問題が示されたからにほかならない。
音楽に政治を持ち込むのは悪いことなのか。そもそも音楽と政治はどのように関係しているのか。音楽は反体制のものなのか。今後、音楽は政治とどう付き合っていくべきなのか。「音楽に政治を持ち込むな」騒動は、こうした一連の疑問を呼び覚ましたのである。
ときあたかも、現代日本では、音楽と政治が結びついた事例が散見されつつある。今年に入ってからの動きをいくつか列挙してみよう。
1月10日、陸上自衛隊中部方面音楽隊の鶫真衣陸士長が、大阪で催された講演会「日本が戦ってくれて感謝しています」で「海ゆかば」を歌唱した。3月13日、SPEEDの今井絵理子(現・参議院議員)が自民党の党大会で「君が代」を独唱した。同月23日、超党派の議員連盟「演歌・歌謡曲を応援する国会議員の会」が設立会合を開いた。
7月3日、2020年東京五輪組織委員会の森喜朗会長が、リオデジャネイロ五輪の代表選手団の壮行会で「国歌を歌えないような選手は日本の代表ではない」などと発言した。同月17日、シンガーソングライターの山口采希が、横浜で催された日本青年会議所主催の「サマーコンファレンス2016」で「教育勅語」を歌にした曲「大切な宝物」を歌唱した。
さらに同日、参議院選挙に立候補した音楽家の三宅洋平が、安倍昭恵首相夫人と会合し、安倍晋三首相とも電話で話したとツイッターで発信した。
個々についていまは論評しないが、このように音楽と政治の話は、無視できないほどに広がりつつある。国外でも、ニースのテロやトルコのクーデタに関して、国歌や行進曲が追悼や動員に使われた例がある。音楽と政治の問題は、今後の日本や世界を考えるうえでも、参考になるはずだ。
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