人それぞれと申しましても、時にはいかにも無謀に付、思わず老婆心の押し付けを図ろうかなどと、思わせる人のあることです。
釣り師A
この釣り師はめげない釣り師であることで、よくめげて参るのですが、すぐ次の手立てを考えますので、めげないとめげないの間のめげた隙間のわずかな事です。
何しろ朝一番は天下は我が物との意気込みが有るところですが、糠に釘打つような釣りの世界である事ですから、へたな思惑などそれは無残に打ち砕かれます。
疲労困憊、打ちひしがれた釣り師は神様からの手ひどい仕置きに、精も根も尽き果てることと成るのですが、この御仁だけは立ち直りが異常に早い。
帰りの渡船では早、次の手立ては整う事でめげては参らぬのです。
この男の釣りにおける、めげない性格なる物どうやらつま先から頭のてっぺんまで支配しているらしく、生き方も揺るぎ無くめげては参りません。
最初は税理士を目指すと言う事であったので、「志」 健気で立派であると周りも細君を含め家族総出、親戚一統 太鼓たたいて応援するところと成るのです。
それは夜遅くまで勉強をする事で、これは早番満願成就と思ったところで雲行きが・・。
次は弁護士になると言う事で、ちょっとそれはと思うところで 「志」 健気であると、ここは思い直して応援するところと成って参ります。
それは夜遅くまで勉強をする事で、これは早番満願成就と思ったところで小雨がぱらぱらと・・。
次は市会議員になって世を正すと言う事なんだそうで、これは大層な事を・・又・・と思いはしたところで「志」健気であると、細君は実家に返ってしまったのですが、それとなく応援する次第で御座います。
それは良く勉強することでしたが、何分支援する人などかなり貧しいところで、涙雨の到来と成ってしまいます。
この後もかなりの変遷を得て、今有るところですが大層な職業を志すところで、取り巻く周辺など、とうに厭戦気分の蔓延するところと成って参ります。今や「志」など「今度は何か?」に成ってしまい、意気兼好な本人を除いて取り巻く周辺など、意気は消沈の憂き目にさらされているので御座います。
彼をよく観察するに、どうも奴さんこちらの思い込みと違い、ある職業に成る事が目的ではなく、目的に向かって孤軍奮闘する自分が好きなのではないかと思い当たる事だ。
決して大物の魚を釣ることではなく、それに向かって努力している最中にえもいわれぬ快感を覚える、どうもそれだ!
老婆心の一つや二つ、いやも少し多く投げつけたところだが、聞く耳など持ち合わせてはおりません。これはこちらの勘所が的外れの事で、糠に釘で有った事です。
市外に集落30戸ばかりの電力を賄う水力発電所がある。
釣り師Aはここで終日メーターを覗く仕事についている。
メーターを覗く仕事のどこに「志」と努力の喜悦があるのか、まだ聞き及んでいない。