拡張現実(AR)技術を活用したスマートフォン(スマホ)ゲーム「ポケモンGO」の大ヒットと関連し、韓国でこの先起きる状況を予測する書き込みがインターネット上で注目を集めている。主な内容はこうだ。まず、韓国大統領府(青瓦台)が未来創造科学部や国土交通部(いずれも省に相当)などにポケモンGOを韓国に導入する方策を検討するよう指示する。やがて、政府が「韓国型ポケモンGO」の開発を目指し数百億ウォン(100億ウォン=約9億円)を投じて拡張現実産業を育成すると発表する。そして1年後「規制に縛られた韓国の拡張現実産業、数百億ウォンの予算はどこへ消えたのか」という批判が出る。
こうした見方がもてはやされるのは、韓国に同じような前例がたくさんあるためだ。今年3月、韓国人囲碁棋士の李世ドル(イ・セドル)九段が米グーグル傘下企業の人工知能(AI)「アルファ碁」との対局に負けたとき、大統領府はすぐさま「韓国型アルファ碁」を開発しようと乗り出した。ほどなくして、向こう5年間で1兆ウォン(約930億円)の政府予算を人工知能に投じると発表した。大企業など民間も出し抜けに総額2兆5000億ウォン(約2330億円)という投資目標を割り当てられた。英科学誌『ネイチャー』はこれを「韓国経済のこの数十年間のやり方と似ている」と皮肉った。
他者の成功を受けて大統領府がすぐに乗り出し「どうして私たちにはできないのか。韓国型○○○を作ろう」と目標を掲げ、政府機関はもちろん民間企業や政府系研究所までもが一斉に飛びつく現象を、私たちは何度も目の当たりにしてきた。ある政府系研究所の関係者は「政権の意向に応じて研究目標がころころ変わるので、競争力を蓄積できない」と指摘している。韓国が強い分野に粘り強く取り組んで成果を出すことができず、他者の成功ばかりを素早く追いかける「ファスト・フォロワー」の習性を捨てられずにいるのだ。