政府と沖縄県の話し合いに、冷たい水を差すことにならないか、懸念される。…[続きを読む]
軍事力による政変は免れた。だが、代わりに現政権が独裁への道を突き進むか…
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軍事力による政変は免れた。だが、代わりに現政権が独裁への道を突き進むかのようだ。
トルコ政府が、先週のクーデター未遂事件に絡んで「反乱」勢力の一斉排除に乗りだした。
拘束されたり、解任・資格剥奪(はくだつ)されたりした公職者は約6万人。軍、警察関係者から裁判官、大学学長、教師にまで及ぶ。多くのテレビ局やラジオ局の免許も取り消された。
エルドアン政権は米国在住のイスラム教指導者ギュレン師を反乱の首謀者とし、その支持者を「テロリスト」と呼んで「根絶やしにする」と宣言した。
民主的に選ばれた政権を暴力で倒す企ては重大な犯罪であり、全容の解明と責任者の訴追が進められるのは当然だ。ただし、それはあくまで法の支配の枠内で手続きをとることが民主国家の原則である。
トルコ政府は、ギュレン師やその支持者らが事件にどう関わったのか明らかにしていない。既定の司法ルールではなく、政治的な判断で大量の公職者らが拘束や処分されているとすれば、ゆゆしい事態である。
ギュレン師は世俗主義とイスラム教は共存できるとする穏健な思想を説き、トルコ知識人の支持者も少なくない。
イスラム主義色を強める現政権に、たとえ彼らが批判的だとしても、十分な証拠に基づかないまま強引に弾圧するのであれば、それは不当な粛清だ。
エルドアン大統領は、02年に廃止した死刑制度を復活させる可能性にも言及した。さらに非常事態を宣言したことで、強権的な手法に拍車がかかるのではとの懸念も広がっている。
強権政治の行きつく先はトルコ社会の分断だ。穏健派も厳しい弾圧を受ければ過激化しかねない。発展を遂げて、多くの日本や欧米企業が進出した経済の先行きも危ぶまれている。
トルコの社会や経済が不安定化すれば、隣国のシリアやイラクで活動する過激派組織「イスラム国」(IS)につけこまれる隙はますます広がる。
オバマ米大統領は「(事件の解明は)法手続きに沿って行ってほしい」と注文し、欧州連合(EU)は「死刑を復活したらトルコはEUに加盟できない」と、くぎを刺した。
エルドアン政権は、トルコの国際的な信頼を維持するためにも、法治の原則を見失わずにいてもらいたい。
トルコは親日国家として知られ、安倍首相とエルドアン氏の個人的な関係も良好だ。自制するよう日本政府も影響力を発揮してほしい。
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