政府と沖縄県の話し合いに、冷たい水を差すことにならないか、懸念される。…
軍事力による政変は免れた。だが、代わりに現政権が独裁への道を突き進むか…[続きを読む]
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政府と沖縄県の話し合いに、冷たい水を差すことにならないか、懸念される。
米軍普天間飛行場の辺野古への移設計画をめぐり、政府はきょう県を相手取り、違法確認訴訟を起こす方針だ。
翁長雄志(おながたけし)知事が前知事の埋め立て承認を取り消したことに対し、国土交通相の是正指示に従わないのは違法だと訴える。
県と政府の和解が成立してから4カ月余。この提訴で、移設計画をめぐる政府と県の対立は再び法廷に持ち込まれる。
改めて確認しておきたい。
国交相の是正指示について、国の第三者機関「国地方係争処理委員会」は6月に適否を判断しないと決め、政府と県に次のように話し合いを促した。
「いずれの判断をしても、それが国と地方のあるべき関係を構築することに資するとは考えられない」「普天間の返還という共通目標に向けて真摯(しんし)に協議し、納得できる結果を導き出す努力をすることが最善の道だ」
政府側は「協議と訴訟は車の両輪」というが、裁判による決着を急ぐ姿勢が沖縄との亀裂をいっそう深めることにならないか、強い疑問を禁じえない。
県議会与党が過半数の議席を得た6月の沖縄県議選に続き、今月10日の参院選沖縄選挙区では、野党統一候補が現職の沖縄担当相を大差で破った。辺野古移設計画をはじめ安倍政権の沖縄政策を批判する民意が、改めて示されたと言えるだろう。
だが参院選の終了を待っていたかのように、政府は再び強硬姿勢を見せ始めている。
日米両政府が米軍北部訓練場の一部返還の条件として合意した、東村高江でのヘリコプター着陸帯移設。参院選の翌11日、中断していた工事を再開する準備に沖縄防衛局が不意打ち的に入った。オスプレイの騒音被害などが拡大しないか、一部住民らの強い反対がある。
14日には、辺野古移設をめぐる県との作業部会で、和解によって中断している陸上部分の工事再開を求めた。
政府が直視すべきは、県民の理解がなければ辺野古移設は困難だし、米軍基地の安定的な運用は望めないという現実だ。日米安保を円滑に機能させるためにも、県民との信頼の立て直しこそ急ぐ必要がある。
政府はまず「辺野古が唯一の解決策」という固定観念から脱することだ。そのうえで米政府に働きかけて海兵隊の規模と機能を再検討し、県外・国外への分散を進めることだ。
民意を軽視していては、決して問題解決にはつながらない。
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