やるせない疑問
美しい炎のようになった花が散るとき
花は寂しそうな煙を残すのだろうか
それとも燃える夕焼け色の実を結ぶのだろうか
花の名は知らない
秋はすぐそこまで来ている
月は昇らずして空は明るい
僕は風のように生きてきた
方向が定まらずとも止まることはしなかった
季節のたびに名前の変わる風のよう
新しいことをやる度に僕は変化した
ひとつのところに居続ける事が好きではないのだろう
自転車に乗った少年が僕の横をすり抜けてゆく
そう言えば僕はすり抜けるのが下手だった
嫌なことは忘れるので
苦手な人も少ない
だから騙されるのだと笑いながら友は言う
路地があった
路地を見かけるとそこを通ってみたくなる
この路地の先にはどんな風景があるのかと想像してしまう
そう思わせる路地の向こう側にはいつもロマンがある
夢とロマンは似ているが
空の遠くでは少し似ていない
夢が見せるのは遥かな未来
ロマンが見せるのは愛おしい哀愁
僕はその真ん中を歩いて来た気がする
大事な言葉と大好きな言葉を集めながら
僕は僕というひとりの人間の決心を歩く
子供の頃何になりたかったのか覚えていない僕は
今を偶然のように生きている
ゆっくりとした時間の中で平凡に生きる大切さを
なんとなく分かりかけている
予期せぬ出来事で胸の痛みを覚えたときに
大事な人が見極められるようになった
レコードのようになった1本の輪を
時々針飛びをしながら歩いて来た
年を重ねるということはこういうことなのだ
自分の奥底にあるやるせない疑問に
いつか答えのようなものが生まれる
風のような生き方の答えもやがて姿を見せるだろう
このままでいいのだ
このままでいいのだ
だが
目の前に現れる小さな疑問が姿を消すことは永遠にない
死がなんであるのかが分からないよう最後までつづいて行くだろう
美しい炎のようになった花が散るとき
花は寂しそうな煙を残すのだろうか
それとも燃える夕焼け色の実を結ぶのだろうか