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自衛隊と喜多方ラーメンとイオンカードに共通する「手作業」という悪手
2016年に入って、情報システムにまつわる事件や事故を報じる機会が非常に多い。最近では、JTBで約679万件の個人情報が漏洩した可能性が発覚し、東京電力では電力自由化に伴う新システムの不具合から電気料金の請求遅れが発生した(画面1)。
少し前の3月には、全日本空輸(ANA)でシステム障害が発生。全国の空港で搭乗手続きができなくなった。ほかにも、大きく報道されていないものも含めて、さまざまなシステムトラブルが発生している。
その中で筆者が特に気になったのは、陸上自衛隊の然別演習場で、空砲を使うべき訓練の際に実弾が発射されて隊員2人が負傷した事故。そしてもう一つ、JR東日本の会津若松駅で起きた、電車の行き先を示す電光掲示板における誤表示だ。「喜多方ラーメン」と表示され、ソーシャルメディアなどで話題となった。
2件とも、一見するとITとは縁遠いトラブルのように思える。しかし実際には、どちらも情報システムに関連して発生したものだと判明している。
筆者が着目したのはその原因だ。前述した大規模なシステムトラブルとは、ちょっと異なるのだ。
入力ミスで空砲が実弾に
陸上自衛隊によると、然別演習場で5月23日に起きた誤射事故は、三つのミスが重なって発生した。(1)砲弾の調達時に、空砲ではなく実弾を調達。(2)受領時に実弾であることに気づかなかった。(3)さらに、誤射した隊員も実弾と気づかなかった。
このうちの(1)調達段階において、情報システムが関連する。調達の担当者は、パソコンにデータを入力する際に、誤って実弾を使用した訓練の過去資料を参考にした。このため、本来発注すべき空砲ではなく、実弾を発注してしまったわけだ。
その実弾が演習場で使用され、負傷者が出た。単純な入力ミスが、事故につながったといえる。
JR東日本の場合も、手作業によるミスが原因だ。会津若松駅の電光掲示板に誤表示があったのは、6月18日のこと。電光掲示板に表示する内容は、管理端末から入力する方式だったが、そこに12年前のイベント列車の運行情報が含まれてしまっていたのだという。
JR東日本は、なぜ古い情報が紛れたかについての詳しい事情は明らかにしていない。この件は大きなトラブルにつながっておらず、誤表示の内容が「喜多方ラーメン」だったことから、あまり批判の声は上がらなかったようだ。
どちらのケースも、業務の重要なポイントを手入力や手作業に頼っていた。人間がすることなので、当然ミスが発生する余地がある。どんなに情報化が進んでも、あらゆる業務プロセスを情報システムとして実装できるわけではない。
この2件は、実際には大事故といえるほどの被害はなかった。しかし、ビジネスや政策に大きなダメージを与えたトラブルも発生している。
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