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【矢板明夫のチャイナ監視台】
柔和でスマートな外交官だった王毅外相はなぜ暴走するようになったのか?
※この記事は月刊正論8月号から転載しました。ご購入はこちらへ。
中国の王毅外相が最近、苛立っているようだ。公開の場で、眉間にしわを寄せ険しい表情を見せたり、相手を怒鳴りつける場面が急増した。中国国内のインターネットにも「ストレスが相当たまっているようだ。何か政治的圧力を受けているのでは」といった書き込みが寄せられている。
最も注目されたのは6月1日、訪問先のカナダで、同国のディオン外相と共同記者会見に臨んだ際に悪態をついたことだ。
あるカナダ人記者が「人権問題や軍事的覇権に懸念がある中国となぜ関係を強化するのか」とディオン氏に質問したところ、王毅氏はいきなり横やりを入れ、「あなたの質問は、中国に対する偏見に満ちており、傲慢だ!」。記者を睨み付けるように「君は中国に行ったことがあるのか」「君は中国の憲法には人権保護が盛り込まれていることを知っているのか」「君には中国の人権問題などを語る資格はない」などとたたみかけ、怒りが収まらない様子だった。
王毅氏のこの態度には世界中が驚いた。「激高する中国外相」と大ニュースとなった。北京駐在の欧州の記者は「あのような場面で記者を叱責するのは、失礼というより非常識。ベテラン外交官が取る行動には思えない」との感想を漏らした。
カナダのトルドー首相はその2日後、「言論の自由は極めて重要だ。われわれは厳しい質問をするのが記者の仕事だと認識している」と王毅氏の対応への「不満」を表明した。記者への不当な扱いについて、カナダ政府として、王毅氏と駐カナダ中国大使に抗議し、外交問題にまで発展した。
カナダに対するだけではない。王毅氏は自身が大使として駐在したことがある日本に対しても、トゲのある言葉を口にすることが多い。
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