2010年6月23日15時33分
両展に展示された「伊豆」(1978年)、幸せそうにみえるクリスティーネの首と手首には自傷の跡がある
美術館「IZU PHOTO」の研究員で、今展を担当した小原真史さんは「治りかけたかさぶたをはがすように、古屋は時間の迷路の中に入り込む。これまで自分で展示の構成を決めてきたのは、人に任せると整理されてしまうからだろう」とみる。
ならば、他人にゆだねた「メモワール.」は、締めくくりとなるのか。
古屋は4月下旬に急病で倒れ、展覧会に合わせて日本に来ることはできなかった。
だが、倒れる前に都写真美術館の問いに対し、「おぼろげながらも所詮(しょせん)何も見つかりはしないのだという答えが見つかったのではないか」と答えている。他方で、倒れた後に改めて真意をただすと「叶(かな)えられない願い故に、あえて逆(ピリオド)を強調したというのが事実」とも。
過去に戻ることができない以上、写真をいくら見つめても解決はない。メモワールに打ったピリオドは、終わりなき苦悩をかえってあらわにしている。(西田健作)
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「メモワール.」展は7月19日まで。東京・恵比寿、祝日以外の月曜休み。熊本市現代美術館に巡回。「Aus den Fugen」展は8月31日まで。静岡県長泉町、水曜休み。5月には最後のメモワール作品集「Mémoires(メモワール). 1984〜1987」も出版された。