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妻の死問う作品に終止符 写真家・古屋誠一2カ所で個展(2/2ページ)

2010年6月23日15時33分

写真:両展に展示された「伊豆」(1978年)、幸せそうにみえるクリスティーネの首と手首には自傷の跡がある拡大両展に展示された「伊豆」(1978年)、幸せそうにみえるクリスティーネの首と手首には自傷の跡がある

写真:両展に展示された「グラーツ」(1997年)。作品写真はいずれも東京都写真美術館蔵©Seiichi Furuya拡大両展に展示された「グラーツ」(1997年)。作品写真はいずれも東京都写真美術館蔵©Seiichi Furuya

写真:東京都写真美術館の展示では、妻クリスティーネの写真を時系列とは逆向きに並べた拡大東京都写真美術館の展示では、妻クリスティーネの写真を時系列とは逆向きに並べた

 美術館「IZU PHOTO」の研究員で、今展を担当した小原真史さんは「治りかけたかさぶたをはがすように、古屋は時間の迷路の中に入り込む。これまで自分で展示の構成を決めてきたのは、人に任せると整理されてしまうからだろう」とみる。

 ならば、他人にゆだねた「メモワール.」は、締めくくりとなるのか。

 古屋は4月下旬に急病で倒れ、展覧会に合わせて日本に来ることはできなかった。

 だが、倒れる前に都写真美術館の問いに対し、「おぼろげながらも所詮(しょせん)何も見つかりはしないのだという答えが見つかったのではないか」と答えている。他方で、倒れた後に改めて真意をただすと「叶(かな)えられない願い故に、あえて逆(ピリオド)を強調したというのが事実」とも。

 過去に戻ることができない以上、写真をいくら見つめても解決はない。メモワールに打ったピリオドは、終わりなき苦悩をかえってあらわにしている。(西田健作)

    ◇

 「メモワール.」展は7月19日まで。東京・恵比寿、祝日以外の月曜休み。熊本市現代美術館に巡回。「Aus den Fugen」展は8月31日まで。静岡県長泉町、水曜休み。5月には最後のメモワール作品集「Mémoires(メモワール). 1984〜1987」も出版された。

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