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男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第389回「『牧場物語』がなぜ面白いのかの考察」
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印刷2016/07/21 20:32

連載

男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第389回「『牧場物語』がなぜ面白いのかの考察」


著者近影
 「牧場物語」とは,マーベラスが販売している牧場経営シミュレーションゲイムである。第一作が1996年にスーパーファミコンで発売されて以来,プラットフォームを変えつつも現在まで続いている人気シリーズだ。その最新作として,先日,ニンテンドー3DS用「牧場物語 3つの里の大切な友だち」(以下,最新作)が発売された。

 牧場物語シリーズは,どの作品もプレイヤーがやることは大きく変わっていない。具体的には,土地を開墾し,作物を育てて出荷し,そこで得たお金で新たな作物の種や家畜を購入し,さらに多くのお金を得て自宅や施設を改築していく。そういうサイクルのゲイムである。
 派生作品として,「ルーンファクトリー」シリーズという,牧場経営に加えてファンタジー世界で敵を倒していくRPGの要素が入ったタイトルもある。だが,ルーンファクトリーという,いわば派手な世界観で,かつ牧場物語のシミュレーション要素を内包したタイトルが生まれているにも関わらず,牧場物語シリーズとしての最新作も作られ続けている。
 牧場物語シリーズが,ここまで息の長い人気シリーズであり続けている理由はどこにあるのだろうか。今回,最新作をプレイしながらそれを検証してみた。

男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第389回「『牧場物語』がなぜ面白いのかの考察」
 シリーズを通して最も大きな,それでいて変わらぬ要素といえば,やはり作物を時間をかけて育て,徐々に品質を上げていくことの楽しさに尽きるだろう。ハッキリ言って,これは単純作業である。しかし,単純作業というものをつまらない,面倒臭いものとして捉えているのではなく,それをどう面白いものにするのかという点で,このシリーズはゲイムに革命を起こしたと言っていいのではないだろうか。
 また,牧場物語はゲイム内に他人を害する描写が一切出てこない。“戦い”というものがないのである。多くのゲイムは,誰かと競う要素を含んでいる。相手が人であろうとCPUであろうと,打ち勝つことが目的で,それが楽しさに直結している作品は枚挙にいとまがない。しかし,その発想を牧場物語は超えた。“敵”が出てこないのである。
 厳密に言えば,ゲイム内イベントとして,作物であったり動物であったり料理であったりが審査されるコンテストのようなものはある。確かにこれは,エントリーしているほかの候補者を敵だと考えることもできる。とはいえ,“敵を倒す”ということではなく,極めて平和的に,成果物を競い合っているに過ぎない。そこには経営シミュレーションゲイムのように,シェアを奪い合うといった“戦い”もない。
 要は,牧場物語は平和なゲイムなのだ。敵がいないのに面白い。これは,ゲイムにおいて極めて特殊なものだと言っても良いだろう。このゲイムは敵ではなく,自分と向かい合う作業こそが重視されているのである。そのうえで,「作業は面倒臭い」という先入観を覆してもいる。
 「面白い作業もあるでしょ?」「作業の末の成果がハッキリしていればやりがいあるでしょ?」……こうした形で,作業の面白さを見事に提供しているのだ。私はこうした姿勢を,ゲイムにおける革命だと勝手に思っている。

男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第389回「『牧場物語』がなぜ面白いのかの考察」 男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第389回「『牧場物語』がなぜ面白いのかの考察」
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第389回「『牧場物語』がなぜ面白いのかの考察」 男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第389回「『牧場物語』がなぜ面白いのかの考察」

 ところで先ほど,「牧場物語シリーズはどの作品もプレイヤーがやることは大きく変わっていない」と書いた。しかし,それはゲイム性が変わらないという意味ではない。ゲイムの面白さには,さまざまな要素がある。もちろん受け止める側――我々プレイヤー――の嗜好により,面白いと感じるポイントは人それぞれだ。
 それは大前提として置いておくとしても,作り手がゲイムに何を詰め込むかによってゲイムの面白さは変わってくる。例えば,ゲイムコンセプトが“愛”の場合,愛のある演出を施すだろう。また,プレイヤーが愛を元に行動を選択すれば,より良い効果がもたらされるような作りにするだろう。受け手は,作り手の工夫によって同じ目的のものでも面白く感じたり,そうでなく感じたりもする。
 文章で考えると分かりやすいかもしれない。書いている内容が同じでも,言い回しによって面白みは変わる。笑いの要素が入っていれば,内容がなくても面白く読める場合もあるし,逆に笑いの要素がなくても内容が興味深ければ面白いと感じられることもある。どちらも間違いではない。
 要は,印象なのだ。実はこれは,エンターテイメントの本質でもある。あえて言い切ってしまうと,エンターテイメントとは,与える側による印象操作なのである。内容があるのに分かりにくければ,それはすなわち面白くない。内容がなくてもそれがバレないように装飾できれば,それは面白いものとなるのだ。
 面白いかどうかの判断が,受け取る側にゆだねられているがゆえに,与える側は印象を操作する。なぜなら面白いと思ってもらうのがエンターテイメントであり,内容の有無は作る側とうるさ型のマニアのエゴに過ぎない。最終的な目的は,より多くの人に楽しんでもらうこと。お金を払って良かったと思ってもらうこと。それ以外にはない。
 そして牧場物語シリーズの場合,いつもと同じような目的をプレイヤーに与えつつも,少しずつユーザビリティが向上している。例えば,最初は作物一つ一つに水やり,収穫をしなければならなかったが,最新作では1エリアをまとめて世話できるようになっている。これによって,プレイヤーがこなすべき作業は効率化された。
 そして,この改善が生み出したのはゲイムテンポであり,ゲイムテンポが生み出したものは,時間をうまくやりくりする楽しみである。つまり,牧場物語はシリーズが進むたびに,同じ目的を提示しながらも,プレイヤーに与える印象を向上させることに成功しているのである。

男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第389回「『牧場物語』がなぜ面白いのかの考察」 男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第389回「『牧場物語』がなぜ面白いのかの考察」
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第389回「『牧場物語』がなぜ面白いのかの考察」 男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第389回「『牧場物語』がなぜ面白いのかの考察」

 ここで筆者は,「牧場物語の面白さは,『作業をいかに面白く感じさせるか』に注力して作られていることによって生まれている。だからこそ,息の長い人気シリーズになっているのだ」と結論づけたい。
 必要のないストレスを減らし,必要な苦労はさせ,そのプレイヤーの努力の成果を強調する。つまり,適度な努力と,それに見合うだけの着実な成果を得られる作品なのだ。また,ゲイムだからこそ,プレイヤーに良い体験だけを与えてくれる。ゲイムだからこそ,面白く手軽に牧場生活に触れることができる。そんな,“ゲイムだからこそ”が詰まった作品と言っても良いだろう。
 率直に言って,最新作は面白い。面白くゲイムをプレイしたうえで,実際に我々が口にする野菜や牛乳などを生産してくれている方々に対する感謝の念すらあらためて生まれてきた。これは,筆者がこのゲイムを十二分に楽しんだ証左と言えるのではないだろうか。
 まだプレイしたことのない方に,ぜひ一度プレイしてみることをオススメしつつ,本研究を締めさせていただく。

2016年7月21日 男色ディーノ

今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 4:「グランドエイジ メディーバル」「ウイニングイレブン 2016
PlayStation 3:特殊なDVD ※死亡確認→復活予定
PlayStation Vita:「UPPERS
PSP:「サモンナイト5
Wii U:「Splatoon(スプラトゥーン)
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン
ニンテンドー3DS:「牧場物語 3つの里の大切な友だち
Xbox 360:「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜

■■男色ディーノ(プロレスラー)■■
ディーノ選手が所属するDDTプロレスは,今週末の7月23日に神奈川・横浜ラジアントホール大会「横浜たそがれ2016〜夏〜」を開催します。ディーノ選手は,石井慧介選手&スーパー・ササダンゴ・マシン選手とのタッグで,KO-D6人タッグ王座決定トーナメントの1回戦に出場し,大石真翔選手&勝俣瞬馬選手&MAO選手と対戦します。ディーノ選手は「もちろんぶっつぶす」と語っていました。
  • 関連タイトル:

    牧場物語 3つの里の大切な友だち

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