久保文明・東京大学教授(寄稿)
2016年7月21日15時58分
米大統領選挙の共和党候補にトランプ氏を指名した共和党全国大会。現地を訪れている久保文明・東京大学教授(アメリカ政治)が朝日新聞に寄稿した。
■2016年選挙の異例さ
1年前の2015年7月、イギリスのEU離脱と、ドナルド・トランプの共和党大統領候補指名獲得のどちらが、よりありえないことであると予想されたであろうか。結果としては、どちらも実現してしまったが、あえて言えば、後者の方が、よりあり得ないことと考えられたのではないだろうか。
2016年の大統領選挙は異例なことずくめである。
まず、二大政党がドナルド・トランプのように、政治経験がほとんど皆無の人物を大統領候補に指名することはまことに異例である。
第二に、第2次世界大戦後の歴史で、共和党が、トランプのように孤立主義的外交政策を提唱する人物を公認候補に指名することも異例なことである。
第三に、2大政党の大統領候補どちらもが保護主義的であるのも、戦後の歴史では異例である。トランプは環太平洋経済連携協定(TPP)に強く反対する姿勢を示し、民主党のヒラリー・クリントンも反対の立場から再交渉を要求すると発言している。
第四として、通商問題やイラク戦争への態度などいくつかの点で、共和党候補トランプの方が左に位置するというのも、珍しいことであろう。1960年選挙では、民主党のケネディが共和党のニクソンより、対ソ連政策でタカ派であった。68年選挙では、民主党の方がベトナム戦争遂行において、共和党よりタカ派であった。かつてはこのような例が少なからず存在したが、最近ではかなり稀有(けう)である。
第五に、今回は、民主党・共和党双方で、党の主流派が苦戦した。とくに共和党においては、党の指導部・エスタブリッシュメントがこれ以上ないほど完璧に敗北したといってよいであろう。
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