米ダラス市警がロボットを無線操縦して狙撃犯を爆殺した。米軍は無人機攻撃を多用する。今は人間が操縦しているが、次世代ロボットは自ら判断して人を殺す。歯止めをかけるのは今しかない。
米テキサス州で今月七日に起きた狙撃事件で、ダラス市警は爆発物処理用のロボットにプラスチック爆弾を運ばせ、容疑者を殺害した。鉄腕アトムに親しんできた日本人には驚くような話だった。
ロボットを使う目的の一つは、危険な場所で人間の代わりに作業させることである。米軍は米兵の命を守るため、爆発物を遠隔操作で処理できるロボットを開発した。同種のロボットが警察などでも使われている。
ダラス市警は「警察官の命を守るため」に使用したという。容疑者は法的な手続きを取られることもなく、死刑を執行された。
軍事用のロボットは陸上だけではない。米軍は無人機で偵察し、ミサイルで“テロリスト”を殺害している。飛行機に乗らないパイロットが、安全な米国本土でディスプレーを見ながら操縦し、ミサイルの発射ボタンを押している。ゲームのようだが、発射ボタンを押したら子どもが標的の人物に駆け寄ってきたという話もある。
こうした軍事用ロボットの操縦は近い将来、人工知能(AI)に代わると考えられている。AIの方が人間よりも判断が速くて正確だ。しかも複数のロボットを同時に操作できる。それはまた、法的な手続きなしでAIが死刑を執行することを意味する。
リスクもある。AIは大量のデータを自ら学習する。米マイクロソフト社が人と会話を楽しむAIとして開発した「テイ」は、ネットユーザーの書き込みで学び、ツイッターでヒトラーを肯定し始めた。AIが正しい知識を身につけるとは限らない。
リスクはまだある。乗っ取られることだ。イランは二〇一一年に当時の米最新鋭無人偵察機「RQ170」を捕獲した。イランの基地を米軍基地と誤認させたとイランは発表した。
「殺人ロボット」をめぐっては、国連の特定通常兵器使用禁止制限条約・自律型致死兵器システムに関する第三回非公式専門家会議がこの四月、ジュネーブで開かれ、議論している。今は米軍が目立つが、独裁政権やテロ組織が手に入れ、利用する可能性もある。産業用ロボット大国の日本は、アトムが象徴する理想を説き、早期の規制導入を訴える必要がある。
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