「抜擢しよう」とすると失敗します
半期に1回、約3万名の育成議論をするリクルート
株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事統括 曽山 哲人
人材育成に悩みをもたない経営者はいない。多くの経営者が「どうすれば若手を幹部に育てられるのか」を思案している。新卒を大量に採用し、すぐにグループ会社の社長などに抜擢して急速に育て、優秀な人材を輩出するサイバーエージェント。同社の人事を統括し、藤田社長の右腕として活躍する曽山氏に若手を育てる要諦を聞いた。
ふだんから“変化するのが当たり前”という企業文化をつくっているからです。だから、大きな変革にチャレンジするときでも抵抗が少ない。“変化するのが当たり前”の企業文化を象徴する制度のひとつがCA8(シーエーエイト)。これはオリジナルの取締役交代制度です。取締役の人数を8名と決め、2年ごとに原則2名の取締役を入れ替えています。
狙いは2つあり、ひとつは事業戦略にあわせてフレキシブルに役員構成を変えていくこと。もうひとつは、より多くの人材に取締役を経験させ、経営に携われる人材を多く生み出し、強い組織をつくることです。
この制度のもとでは、いったんは取締役になったのに、外れてしまう人材が必ず出てくる。一般的な会社であれば、これは“降格”です。取り返しのつかない大きなミスでもしない限り、あり得ないこと。でも、私たちの企業文化では、当たり前のことなんです。
そうならないために大事なのは、社員の話をよく聞くことです。サイバーエージェントはとにかく社員の話をよく聞く会社。私自身、5名ぐらいの社員とランチに行くのが日課。1ヵ月に100名、年間1,000名超の社員の話を聞いている計算になります。いま、社員数は3500人ほど。3年でほぼ全員の話を聞いているわけです。
わかります。社員が30名を超えてくると、トップが社員ひとりひとりと接することが難しくなる。かといって、特定の人間と話すと“ひいき”していると思われ、だったら「もう自分は絡まない」と中間管理職に任せてしまう。ベンチャーあるあるです。ただ、それではいずれ組織が弱くなります。新事業を立ち上げる、人事制度を変える、抜擢人事を実行する。なにごとにせよ、社員がどう考えているかを知っておき、多くの社員に受け入れられるように手を打っていく必要があります。新たな人事制度を決めるミーティングの場でも、決まって出てくる発言が「それで、社員はなんて言っているの?」。それに対する答えが、意思決定の重要な参考材料になるからです。
社員の意見の多数決で意思決定するわけではありません。経営方針を社員に浸透させていくうえで、社員の声を重要な参考情報にするということです。
サイバーエージェントには先に話したCA8をはじめ、オリジナルの社内制度がたくさんあります。オリジナルであることにこだわっているのは、「サイバーエージェントの社員が喜んで受け入れられるものを考え抜く」という理由が大きいのです。
たとえばmacalon(マカロン)という制度があります。これは、「ママ(mama)がサイバーエージェント(CA)で長く(long)働く」から命名した制度。女性社員が出産・育児を経ても働き続けられる職場環境の向上を目指し、妊活のための休暇や子どもの看護が必要なときの在宅勤務など、5つの制度をパッケージ化したものです。他社に先駆けてこうした制度を導入したことで、世間で話題になり、社員がそれを誇りに思う。会社へのロイヤリティを高める効果がありました。
社員の声をふだんからよく聞いているからこそ、社内制度の変革が社員の声にそったものになり、社員が喜んで受け入れてくれる。もし、社員のためによかれと思って導入した制度が、当の社員たちに不評だとしたら、それは感情に刺さっていないからです。なぜ刺さらないのか。それは、経営陣が社員の声を聞いていないからだと思いますよ。
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