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10代からジャズ評論で知られた…

 10代からジャズ評論で知られた大橋巨泉(おおはしきょせん)さんは早大の俳句研究会で寺山(てらやま)修(しゅう)司(じ)という新入生の句と出合う。<黒人霊歌(こくじんれいか)桶(おけ)にぽっかりもみ殻浮き>。ここは一言あるべしと巨泉さんが尋ねた。「君はどれほど黒人霊歌について知っていますか」▲「では、大橋さんは東北の薄暗い厨(ちゅう)房(ぼう)についてどのぐらいご存じですか」。新入生はすぐに短歌に転じ、彼の才能に衝撃を受けた巨泉さんは俳句をあきらめる。やがて2人は「11PM」でこの場面を語り合うことになった▲その巨泉さんが若き日のジャズと俳句趣味との幸福な結婚と評する「作品」がある。1969年のパイロット万年筆のCM、「みじかびのきゃぷりきとればすぎちょびれ すぎかきすらのはっぱふみふみ」である。当時、爆発的人気を呼んだポップワード短歌だった▲ジャズメンたちが好んだ隠語や語呂合わせと、五・七調の韻律(いんりつ)を融合させたというのがご当人の説明である。後に岡井(おかい)隆(たかし)さんが編んだ「現代百人一首」にも選ばれたこの歌だが、もちろんそこには寺山修司の一首もあった。歌の世界での2人の意外な「再会」だった▲今さら並べ立てるまでもない多彩な才能や趣味すべてを生かして「テレビが家庭の王様だった時代」の王子を演じてみせた巨泉さんである。90年に自らほとんどの番組を降板した「セミリタイア」にいたる四半世紀、テレビのホスト役の神髄を身をもって示し続けた▲同じ昭和ヒトケタ世代で、テレビ草創期からの親友、永六輔(えいろくすけ)さんの訃報(ふほう)を知らぬまま逝った巨泉さんだ。「誰だって巨泉のように生きたい」とは、永さんが一昨年の小紙連載に記した言葉である。

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