今晩(2016年7月20日)配信した「メルマガ金原No.2513」を転載します。

全ての原発の基準地震動の再計算を求める25団体「共同声明」

 一昨日書いた「島崎邦彦氏(東大名誉教授)から田中俊一原子力規制委員会委員長宛の申入書を読む」(2016年7月18日)の続編です。
 まずは、昨日から今日にかけての動きを伝える報道を確認しておきましょう。

東京新聞 2016年7月20日 朝刊
大飯地震動再計算 規制委、不適切と認める 評価方法は変えず

(引用開始)
評価方法は変えず
 関西電力大飯原発(福井県)の地震動を巡り、過小評価していると主張する原子力規制委員会の島崎邦彦前委員長代理と田中俊一委員長らが十九日面談した。田中氏らは、規制委による再計算が不適切だったと認めながらも、従来の評価方法は維持する考えを示した。二十日の定例会合で、五人の全委員で協議する。
 島崎氏は、関電が用いた計算式だと、垂直に近い断層では地震動を大幅に小さく評価すると指摘。規制委は別の式で再計算し、関電の数値を下回っていたことから、十三日の定例会合では、大飯原発が想定している地震動は妥当で見直す必要はない、と判断した。
 十九日の面談は、規制委の判断に異論を唱えた島崎氏から直接意見を聴くために開かれた。席上、再計算を担当した職員らは、式を変えると、断層の総面積よりも、ずれて強い揺れを生む部分の面積の方が大きくなるなど多くの矛盾があり、再計算の結果は無理に出した数字だったと明らかにした。この説明に田中氏は「できないことをやってしまった。前の委員会でいいだろうと申し上げたが、そこも含め議論する必要がある」と述べた。
(引用終わり)
 
時事ドットコムニュース(2016/07/20-12:49)
再計算の判断保留=大飯原発の地震動-「説明不十分」事務方に苦言・規制委

(引用開始)
 
原子力規制委員会元委員長代理の島崎邦彦東京大名誉教授が、原発審査で想定する地震の揺れ(基準地震動)が過小評価されている恐れがあると指摘した問題で、規制委は20日、事務局の原子力規制庁が行った再計算の説明が不十分だったとして、今後の対応について判断を保留した。規制庁に対し、再度の説明を求めた。
 規制庁は13日、規制委の定例会合で再計算結果を報告。関西電力大飯原発(福井県)の審査で認められた数値の範囲内に収まり問題ないとの見解を示し、規制委は再計算を打ち切る判断をした。一方、規制庁は19日の島崎氏との面談で、再計算結果が十分に使えるほどの精度がないと説明した。
 地震担当の石渡明委員は20日の定例会合で、「(問題のある計算だと)きちんと言ってくれなかった。判断に問題があったように思う」と指摘。伴信彦委員も「事務局の情報が全てなので、十分に情報が提供されなかったのは大いに問題だ」と苦言を呈した。
(引用終わり)

 原子力規制委員会の公式YouTubeチャンネルから、①19日の田中俊一委員長らと島崎邦彦氏との面談、②20日の第22回委員会、③20日の委員会終了後の田中委員長の定例記者会見の模様をご紹介しておきます。
 このうち、最初の①をフルで視聴した私の知人から、「疲れました。」というメールが届いていました。「さもありなん」というところです。そこで、1時間50分も視聴するのは無理という方のために、今日(20日)の第22回委員会の資料として大急ぎで作成された「面会速記録(未定稿)」が原子力規制委員会ホームページにアップされていますので、それをお読みになることをお勧めします。

島崎邦彦 前原子力規制委員会委員長代理との面会 (平成28年07月19日)(1時間51分)


第22回原子力規制委員会(平成28年07月20日)(1時間20分)


原子力規制委員会 定例記者会見(平成28年07月20日)(58分)


 なお、この一連の動きを受けて、本日、美浜の会、グリーン・アクション、FoE Japan、脱原発わかやまなど25団体が共同声明を発表しましたので、その全文をご紹介します。
PDFファイル

(引用開始)
[共同声明]2016.7.20
入倉・三宅式の過小評価を熊本地震が証明

武村式を用いた規制委の試算を適用すれば
大飯原発3・4号の基準地震動は、856ガルから1,550ガルへ
クリフエッジ1,260ガルを超えて、地震に耐えられず大惨事に

大飯原発の再稼働は断念を!美浜原発3号の寿命延長は断念を!

川内原発を止め、伊方3号の原子炉起動を中止して
全ての原発の基準地震動を武村式で再計算すべき

 島崎邦彦氏は、熊本地震を踏まえて「入倉・三宅式では地震動は過小評価」との警告を発し、原子力規制委員会・規制庁は7月13日に、大飯原発の地震動を武村式で再計算した結果を公表した。
 その結果は、基本ケース(破壊開始点3)で、東西方向の揺れは入倉・三宅式による356ガルが、武村式を適用すると644ガルとなった。原発の津波評価で採用している武村式を地震動に適応すれば、1.81倍になることを示している。大飯原発の基準地震動856ガルは1,549ガルになり、クリフエッジを超えるため大惨事となる。

 大飯原発だけでなく、入倉・三宅式で計算されている現行の基準地震動を1.81倍すれば、美浜3号もクリフエッジを超え、高浜原発や玄海原発でもクリフエッジに近づく。
 さらに、震源の大きさ(M0)から地震動(加速度)を導く場合、M0の1/3乗を適応しているが、これは単なる仮定であり、片岡ほかの1/2乗を採用すればさらに地震動は大きくなる。

(最大加速度:ガル)
原発/入倉・三宅式による現行/1.81倍した場合/クリフエッジ※
大飯原発/856/1,549/1,260
美浜3号/993/1,797/1,320
玄海3・4号/524/948/988
高浜3・4号/396/717/973
※)クリフエッジ(崖っぷち):これを超えると炉心の冷却ができなくなり大惨事にいたる地震動

 規制委の田中委員長は、7月19日に島崎氏と面談し、自らの再計算結果について「無理を重ねて計算した」「信用できるものではない」等と述べたが、これほど無責任なことがあるだろうか。島崎氏が述べているように、関電の示している基本ケース(破壊開始点3)の東西方向の揺れ596ガルに対して、規制委の356ガルはあまりに過小であるが、このことについての明確な説明もできなかった。さらに、規制庁の小林勝氏は、7月13日の記者会見で、武村式の適用を「不確かさ」として位置付けている。しかし、式そのものを変えることは「不確かさ」ではない。現行の不確かさの全てのケースで用いている入倉・三宅式を武村式に置き換えた計算をすべきだ。これら詳細なデータを規制委が示さない限り、入倉・三宅式の1.81倍の加速度になることを受け入れなければならない。

 規制委は自らの再計算結果に基づき、大飯原発、美浜原発3号の再稼働を断念すべきだ。同時に、川内原発を停止し、伊方3号の原子炉起動を中止して、全ての原発の基準地震動を武村式で再計算すべきだ。

2016.7.20 25団体

ふるさとを守る高浜・おおいの会
原発設置反対小浜市民の会
原子力発電に反対する福井県民会議
福井から原発を止める裁判の会
プルサーマルを心配するふつうの若狭の民の会
サヨナラ原発福井ネットワーク
原発なしで暮らしたい丹波の会
グリーン・アクション
京都の原発防災を考える会
3.11ゆいネット京田辺
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
おおい原発止めよう裁判の会
脱原発わかやま
脱原発はりまアクション
花風香の会
避難計画を案ずる関西連絡会
放射能のゴミはいらない!市民ネット・岐阜
さよなら原発・ぎふ
核のごみキャンペーン・中部
玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会
川内原発30キロ圏住民ネットワーク
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
国際環境NGO FoE Japan
福島老朽原発を考える会
原子力規制を監視する市民の会

<連絡先>
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
530-0047 大阪市北区西天満4-3-3星光ビル3階
TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

グリーン・アクション
606-8203京都市左京区田中関田町22-75-103
TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

原子力規制を監視する市民の会
162-0822 東京都新宿区下宮比町3-12-302
TEL 03-5225-7213 FAX 03-5225-7214
(引用終わり)

 最後に、今日の毎日新聞夕刊「特集ワイド」で島崎邦彦さんが取り上げられており、かなり突っ込んだ質問もされています。デジタル毎日で会員登録しないと読めない記事だと思いますが、無料会員でも何本かの記事を読むことはできるので、リンクしておきます。出来れば、是非お読みになるようにお勧めします。
 

(付録)
『メルトダウン (高田渡の「値上げ」の替え歌)』 
演奏:ヒポポ大王(?)