55歳郵便配達員に生活保護が必要な深刻理由

期間雇用社員を苦しめる正社員との賃金格差

日々の郵便配達で腕が真っ黒に日焼けしている、三田剛さん(55歳、仮名)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困にフォーカスしていく。

 

この連載の一覧はこちら

7月中旬、神戸市内の郵便配達員、三田剛さん(55歳、仮名)に会った。期間雇用社員の三田さんの二の腕から先は早くも真っ黒に日焼けしていた。その日焼け具合は正社員となんら変わらない。が、待遇には天と地ほどの違いがある。

たとえば昨秋、全国各地の社員たちが総出でこなした「マイナンバー通知カード」の配達。制度実施に先駆け、通知カードの入った簡易書留を全国約5400万世帯に一斉に配った。究極の個人情報の誤配は絶対に許されない。つねにない緊張感の下、社員らは通常の仕事をこなしながら、仕分けや住所確認などの作業に追われた。

このとき、正社員には7万~8万円の手当が出たが、三田さんら非正規の期間雇用社員はゼロ。あまりの差別に「まったく同じ仕事をしてるのに、なんでやねん」とぼやく。

正社員の新人教育も仕事のうち

実際には「同じ仕事」どころではない。現在、三田さんはこの春に新卒で入社してきた正社員に「混合区」の配達方法を教えている。主に配達時刻が指定された速達や書留といった重要郵便物を配る混合区は、その都度、配達コースを工夫したり、配達中も臨機応変に道順を変えたりしなくてはならず、ここを任されるのは、社内でも担当区域に精通した優秀な配達員に限られる。業務用の住宅地図と首っ引きで指導をするのだといい、こうした新人教育はここ数年、彼の仕事のひとつにもなっている。

また、取材で会った日は郵便物が少なく、正社員のほとんどが定刻より1時間早く退勤できる「時間休」という制度を利用して引き上げていった。しかし、三田さんにはそんな制度はない。夕方から1人営業に出掛けたと言い、「早速、(暑中見舞はがきの)“かもめ~る”の営業、1件取ってきましたで」と胸を張る。

雇用更新を繰り返して勤続11年。混合区の配達も新人教育も任されるベテランだ。年賀はがきやかもめ~るなどの販売成績も局内トップクラス。しかし、年収は約350万円。正社員以上の働きをしているのに、年収は正社員に遠く及ばない。

次ページ正社員と期間雇用社員の年収は……
関連記事
Topic Board トピックボード
人気連載
Trend Library トレンドライブラリー
  • Facebook-
Access Ranking
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!

※過去48時間以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※週間いいね数のランキングです。

トレンドウォッチ
西松屋 電機リストラ組「俺たちのベビー用品」

ベビー用品の西松屋がヒット商品を連発している。原動力はパナソニック、ソニーなど電機メーカー出身の「リストラ技術者」。開発したバギーがいきなりヒット。好調はいつまで続くか。

  • 新刊
  • ランキング