双六岳から望む槍ヶ岳
こんばんわ!
前回の記事を書いてみたものの、山登りをしない人には山小屋ってそもそもどんな所なのかサッパリ謎ですよね。
経営の規模にもよるのですが、今回はカンタンに中身をご説明します。
※今回はこちらの記事↓の番外編にあたります。
山小屋ってどんなとこ?
(宿泊)
・宿。寝袋はいりません(笑)布団付き。
・宿泊料:大体一泊2食で10000円くらい。(高いか安いかはアナタ次第)
・部屋:基本、相部屋。繁忙期には3人で2枚の布団とかになったりもする。入りきらなくて廊下や談話室で寝てもらうことも…。
・繁忙期でなければ追加料金で個室対応も可。
・食事が取れる。(素泊まりも出来る)
(立ち寄り)
・売店。山雑貨や食品・飲料・お菓子が買える。ラーメンやカレーなどの軽食もある。
・キャンプ場の管理も兼ねているところも多い。S小屋の場合、1張500円。
・中~大規模の小屋には夏の間、診療所が併設。お医者さんも常駐。
・遭難者の救出の拠点。ヘリの離着陸も。
・トイレ利用(有料もしくはチップ制)
こんなところでしょうか。
要するに「何でも屋」ですね。
何でも屋が日本中の至るところの山にあるんです。
昭和中期に登山ブームがあり、昔取った杵柄で今も中高年がたくさん登山をするとはいえ、今では若者も女の子もたくさん来ます。
山には何か人を惹きつける何かがあるのかもしれませんねぇ。
山小屋の1日(繁忙期)のスケジュール
・4時半:起床
(ただしS小屋では3班制にわけて、その内の1班が朝食の準備を行うため、1回やったら翌日と翌々日はゆっくり寝られます)
・5時半頃:朝食の提供開始
・7時:朝食の後片付け開始
(朝食準備でない班の連中は6時半頃から作業開始)
・8時:スタッフの朝食、その後、館内や部屋の清掃
10時:お茶休憩30分
・10時半~:男は登山道の整備や力仕事、女はお客さんの対応や昼食の準備
12時:昼休み1時間
・13時~:男は力仕事、女は中の仕事
15時:お茶休憩30分
・17時半~:夕食の提供開始
・19時:スタッフの夕食
・20時:片付けなど
・21時:発電機を落として消灯
・このあと力尽きるまで:酒盛り
こんな感じでした。
混雑具合でかなり違うんですけどね。
意外と休憩時間があるでしょ?
お茶休憩には、下界からヘリに吊られて飛んできた段ボールいっぱいのスタッフ用のおやつ(通称「バイト菓子」)なるものがありまして、それを皆で食いまくるのですが、今日は何を食べるかとても楽しみでした(^_^;)
朝はめちゃめちゃ早いけど、発電機で電気を作っていることから消灯も早いので、しっかり寝れば苦にはなりません。
翌日、朝メシ当番じゃない時は大抵遅くまで皆で騒いでましたね。
とても良い思い出です。
休みは、お盆休みを中心に真夏こそほとんど無いけれど、ちゃんとスタッフがつぶれない程度に休みは与えられるし、何かあったらちゃんと交代できるだけのメンツが揃っています。
全然逃げないライチョウさん
・・・
山小屋での日々は、言ってみれば部活の合宿のようでした。
だって起きて5分で仕事開始ですからね。
女の子もいちいちメイクなんてしてられません。
カッコいい男子がいてもボサボサ頭の姿を見られてしまうのです。キャッ☆
(だから皆、手ぬぐいなんかを巻いて作業してます。小屋の手ぬぐいの宣伝にもありつつ、寝ぐせ隠しを兼ねていたりとなかなか合理的)
そんなわけで男としては、抱いていた女性のイメージが変わります。
ああ、女もおれらと同じ人間なんだな、とね。
綺麗な女の子の、綺麗じゃないところを見たくない人には向かないお仕事です(笑)
あ。
ちなみに、風呂ってどうしてると思います?
当然ですが、宿泊客が入るお風呂はありません。
山小屋には基本、入浴施設は無いものと思っていただいて正解です。
ただ、数ヶ月を山の上で過ごす従業員がまったく風呂に入らないというわけにもいきません。
(そんなところで働いてくれる人はいません笑)
というわけで従業員用の風呂があります。
ただし水は貴重品なので3日に一回。
この回数が小屋によって異なります。
有名な槍ヶ岳山荘だと、ほぼ山のてっぺんに建っていることから水の確保が難しく、完全に雨水頼みです。
ここでは風呂は5日に一回、下手したらそれ以下だと言っていました。
さすがに5日空くのは厳しいな〜(^_^;)
山と山の間に位置するS小屋は夏でも溶けきらない雪渓から水を引くことができ、かなり豊富に水を確保しています。
お客さんもタダで水を汲むことができる貴重な小屋でした。
・・・
さて、今回も余談。
毎度毎度ゴメンナサイ。
この「朝起きたら階段を下りて仕事開始!」というスタイル。
関東にいた頃の自分を含め、通勤・通学に1時間も2時間もかけていた人には、ものすごく新鮮で衝撃的でした。
「タイムイズマネー」って決してウソじゃないです。
通勤がないことにより「ずっと職場にいるのに比較的自由な時間がある」という不思議な矛盾が起こります。
10分休憩で自分の布団でマジ寝する、とかね。
職場だけど自分ち。
自分ちだけど職場。
でも、このスタイルが合うか合わないかは性格にもよるかもしれません。
職場から近くに住むとオンオフの切り替えがしづらいからイヤ!って人もいますもんね。
余談、終わり。
・・・
あっという間に季節は流れます。
笠ヶ岳からの雲海
山の上は季節の進みが早いです。
6月の終わりにまだ雪の残る山に入り、あっという間に夏になって、盆が過ぎると薄手のフリースを羽織り、9月にはとっぷりと山が紅葉し、10月になる前に雪が降り始めます。
前述の通り、非常に小さなコミュニティの中での共同生活。
季節が短縮されているのと同じように、お互いの良い所も悪い所も視界に入ることで、町で数年かけて縮まる距離が3~4ヶ月にぎゅぎゅっと凝縮したような日々でした。
今でもたまーに会ったりもするけれど、即座に当時の感覚に戻れるし、たぶん一生の仲間だと思います。
そんな2年間の濃い夏を過ごさせていただいたのでした。
いよいよ下山の日。雪が積もっていたので書き残してきましたよ。
バイバイ!山での日々。
ちょっと胸にこみ上げるものがある瞬間です。
・・・
西鎌尾根にかかる滝雲
ちなみに、夏の山小屋シーズンは大体7月から10月末。
スタッフは小屋開け・小屋締めのため、その前後1週間くらい余分に小屋で生活するので、大体6月下旬から10月いっぱいくらいを山で過ごします。
当然、泊まり込みになるのですが、その間の生活費はかかりません。
むしろ、労働の割に日給が低いのは、滞在中の生活費を差し引いていると考えても良いかも。
そして、山ではお金を使う場所が物理的になく、日給7~8000円×百数十日分が最終日に支払われます。
つまり下山時には100万円以上の札束がバッグに入っていることになります。
もはや下山後に目の前に広がる世界はどこもかしこもユートピア!うひょ~
山小屋の期間以外はどうやって生活する?
さて、山小屋を中心に1年のスケジュールを組むわけですが、それ以外の期間の収入はどうしましょ。(・・?)
↑正直、僕はあんまり考えていませんでした。
とりあえず当面のお金はあるし、一人で好きなことして一人でダラダラしたい。(←たぶん山小屋経験者は全員この状態になる)
山に行っている間も家賃8500円の部屋はずっと借りっぱなしだったので、
とりあえず下山後には家から10分ほどのスキー場に連絡して冬から働くことを早々に決め、
あとはテキトーにふらふらしながら冬を待つ感じでした。
僕はあの有限のような無限のようなダラダラ~っと続く休暇が大好きでした(笑)
山にいる間に「下山したらやりたいリスト」を書き留めてあったので、それを片っ端からつぶしていくのです。
シアワセだったな~^^
・・・
そんなこんなで、冬はスキー場でぼちぼち仕事。
(大体、平均して月20万ほどの稼ぎでした。年末年始はちょっと時給が上がったりして稼げるよ!)
やがて春になります。
スキー場は閉まります。
またまたどうしよー(笑)
今度はスキー場でお世話になった人のツテで、小中学校の野外体験教育のお手伝いの仕事をさせてもらいました。
学校登山とかね。キャンプとかアウトドアとか。
また夏になれば山に行ってしまうのでサポートスタッフ止まりでしたけど、インストラクターみたいな仕事も面白いなって思いましたよ。
やがて季節は初夏を迎え、また山小屋へ…と続くわけです。
こうして山小屋を中心とした2年の日々が過ぎていきましたとさ。
・・・
結構、余裕な感じでしょ?
ただ注意が必要なのは、保険や年金は給料から引かれません。
全部自分で確定申告とかしなきゃいけません。
山にいる間に払っていなかったお金とかあれば、下山と同時にドカッと出ていきます。
僕はケータイが止まりかけました(笑)
だから、贅沢をしなきゃ生活は出来るけど、豪遊するほどは遊べないんだな~。
そんなわけで、籍は実家にあるってヤツが多かったです。
ふん!ダメ人間どもめ!(笑)
・・・
でも、いい歳したオトナになって、もう二度と来ないと思っていた青春のような日々でした!
もし機会があれば行った方がいい、おすすめの仕事です。
(補足)
不景気な世の中になり、仕事が見つからない、生活費がかからない、まとまったお金が入る、という理由で近年、応募者が殺到するそうです。
僕の時で15倍とかそんなもんだったという話を聞きましたが、今はなんと30倍くらいだとか…。
ひえ~。