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半月後に迫ったスポーツの祭典を荒波が襲っている。 ロシアによる禁止薬…
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半月後に迫ったスポーツの祭典を荒波が襲っている。
ロシアによる禁止薬物使用の問題を調べていた世界反ドーピング機関(WADA)が、新たな調査報告書をまとめた。
大半の競技で薬物の不正があり、それを国家が組織的に行っていたと認定した。リオデジャネイロ五輪・パラリンピックからロシア全体を締め出すよう勧告している。
ロシア政府と関係者は、まず率直に責任を認め、スポーツを国威発揚に使う考え自体を根本的に改めるべきである。
報告書によると、不正は夏季競技から冬季競技、パラリンピックにまで及んだ。採取した尿がすり替えられた。取り締まる側の検査機関の所長が禁止薬物を提供し、隠蔽(いんぺい)はスポーツ省が主導する悪質なものだった。
疑惑はこれまでも浮上していたが、ロシア側の対応は不誠実すぎた。当初は疑惑そのものを認めず、処分は個人にとどめるべきだと開き直った。今回もプーチン大統領は政治によるスポーツへの干渉だと反発した。
背景には、バンクーバー冬季五輪の低迷があったとされる。国の威信向上をねらう不正は、スポーツ界幹部と国家上層部が作り上げた、あしき文化といえるだろう。
努力を重ねて限界に挑む選手も、スポーツそのものも、国の目的達成のために使われただけだとしたら残念でならない。
WADAの昨年の報告書は、「選手に対し、薬物を使うか、代表選手をやめるかを選べという雰囲気があった」と指摘していた。大きな舞台に出場するには不正を受け入れるしかなかったとすれば、選手たちは国家の犠牲者だったともいえる。
これほどの不正には重い処分で臨むべきではあるが、選手全体を排除することが適切か否かは慎重な検討が必要だろう。個々の選手について事情調査をするなどし、個人的にでも道が開けないか手立てを尽くすよう、国際オリンピック委員会などは知恵を絞ってもらいたい。
ロシアの問題に限らず、スポーツが世界的に商業主義と関係を深めるなか、経済的利益を目的にした選手のドーピングも幅をきかせている。
国際陸連では、違反の疑いがある選手に関係者が金銭を要求していたとされる。国際サッカー連盟の醜聞も、多額の金銭をめぐるものだった。
公平、公正を価値とするスポーツ界のモラルが危機にある。五輪を前にスポーツ界はいま一度、自分たちの取りくみを見つめ直す必要がある。
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