政務活動費約910万円をだまし取ったとして詐欺などの罪で在宅起訴された野々村竜太郎・元兵庫県議(49)に対し、神戸地裁は今月はじめ、懲役3年執行猶予4年(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。

 行ってもいない出張費を請求する。食料品などのレシートを改ざんして「事務費」として計上する。そんな手法で公金を詐取したと、判決は認定した。

 「号泣会見」で注目を集めたこの件をきっかけに、地方議員による政務活動費の不適切な使用が各地で表面化した。先週も富山県議会の副議長(56)が領収書を偽造して約460万円を架空請求したことが発覚し、今週辞職した。全国の議員は、改めて襟を正すべきだ。

 朝日新聞の昨年の全国調査で発覚した事例は、およそ公金を扱う議員のやることとは思えない乱脈の実態だった。

 人件費などの名目で身内企業に支出した例や、演歌コンサート代を計上した議員もいた。

 政策を磨くための調査研究なら大いに結構だ。意識すべきなのは、政務活動費が政策立案にどう役立っているか、各議員には説明責任があることだ。

 多くの議会で、政務活動費は一定額が会派や議員に前払いされる。これでは「返したくない」との意識を誘発する。

 京都府京丹後市は、議員に活動報告書や領収書を出してもらい、議長が審査した後で支給する後払い方式にしている。

 調査研究にかかった費用の補填(ほてん)という政務活動費の性格上、こちらの方が健全だ。

 野々村元県議以外も不適切支出をしていた兵庫県議会は、1人月50万円を月45万円に減額し、議員は使った分を会派から後払いしてもらう方式に変えた。その効果もあり、15年6月~今年3月に支給された約3億7千万円の3割が返還された。

 この際、各議会は後払い方式を基本にしてはどうか。

 もちろん、金の流れを市民にさらすことは欠かせない。

 収支報告書をネット公開する自治体は増えている。だが添付する領収書までネット公開の対象にしているのは高知県、大阪府、兵庫県など一部にとどまる。他自治体も追随すべきだ。

 舛添要一・前東京都知事の政治資金の公私混同問題で明らかになったように、公金を扱う政治家の意識は市民感覚とずれていることが少なくない。

 議会を傍聴する。ネットで読めるなら議事録に目を通す。そんな市民の行動の積み重ねこそが、「見られている」という緊張感を議員にもたらす。