廃炉計画から石棺削除 専門家「丁寧な説明必要」

先週、公表された東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた技術的な計画で初めて記述された核燃料を取り出さずに建屋内で閉じこめる「石棺」と呼ばれる方法について、国の専門機関は福島県など地元の反発を受けて計画から記述を削除しました。専門家は廃炉の目標を明確にし、丁寧に説明する必要があると指摘しています。
福島第一原発の廃炉に向けて国の「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」は、今月13日、事故で溶け落ちた核燃料を取り出すことがあくまで大前提としたうえで、核燃料を建屋内で閉じ込める「石棺」と呼ばれる方法に初めて触れ、この方法に選択の余地を残した技術的な計画を示しました。
ところが、福島県など地元から容認できないとする声が相次ぎ、20日、公表された修正版では、石棺という文言とともに選択の余地を示す「今後明らかになる内部状況に応じて柔軟に見直しを図ることが適切である」などとしていた文章を削除し、「福島第一原発の廃炉ではこのような取り組みは採用しない」などとしました。
会見で、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の山名元理事長は「住民の誤解や心配を招きやすい表現となっていた。核燃料を長期間放置することはないという当初から言っていた姿勢は変わらず、『石棺』ということばに意味はなかった」と説明しました。
これについて福島県の内堀雅雄知事は、「私自身、石棺方式については今後も導入されることはないと受け止めているが、県民は疑心暗鬼にもなっており国と当事者は不安を与えた経緯を踏まえて廃炉を進めてほしい」と述べました。
一連の対応について、日本原子力学会で廃炉検討委員会の委員長を務める宮野廣さんは、「計画で最終的に廃炉をどういう形に持っていくかを明確にしていないため、『石棺』ということばが一人歩きしてしまった。まずは目標を十分に議論し、丁寧に説明する必要がある」と指摘しています。その一方で、地元の反発を受けて僅か1週間で修正に至ったことについて、「今回の計画はどのような方法や課題があるかを示す技術的な報告書なので、誤解を招くからといって直ちに修正するのではなく、本来はもっと説明を尽くすべきだったのではないか」との考えも示しました。