東京都知事選 暮らしの議論深めよう
東京都知事選では、都民の暮らしや生活に関わる政策課題が争点となっている。だが、こうした問題をめぐる議論はまだ不足している。
保育所に入れない待機児童の問題や、超高齢化に対応した介護、医療などの全国的な課題はとりわけ首都・東京で切実だ。だからこそ、東京がこの問題を解決できるかが問われる。候補者はより具体的なプランを示してほしい。
都知事選は21人が立候補している。毎日新聞の序盤の世論調査によると元防衛相の小池百合子氏(64)とジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76)が競り合い、元総務相の増田寛也氏(64)が追う展開となっている。
調査からは、生活課題を重視する傾向が浮かぶ。新知事に優先してほしい課題は(1)教育・子育て(2)医療・介護(3)行財政改革の順だった。
子育てに関し、対策が急がれるのは待機児童問題だ。東京都は今年4月時点の保育施設の待機児童数が8466人に達し、前年同期より652人増えたと発表した。受け入れ数を拡充しても需要増に追いつかない状態がここ数年、続いている。
主要候補の3氏はいずれも解決に取り組む姿勢を強調し、施設を増やすための基準緩和や23区との協議などを掲げている。
こうした方向性に異存はない。だが、東京の保育所増設はこれまで用地や保育士確保の壁に当たってきた。増設と保育の質の維持をどう両立するかも課題になっている。施設や人材確保に必要な予算配分の見直し策などを示すべきだ。
また、保育所の整備は市区町村が進めるため毎年23区全体でどれくらいの保育のニーズが見込まれ、対応が可能なのかを都は事前に把握できていない。都が関与し、調整できるしっかりした枠組みが必要だろう。
東京は急速に進む超高齢化への対応も迫られている。
2025年には都内で75歳以上の後期高齢者は200万人に達し、介護、医療需要の急増が予測される。これまで東京の介護施設不足を補っていた近隣県の後期高齢者も急増するため、多くのお年寄りが「介護難民」となりかねない状況だ。
主要3候補は公約に特別養護老人ホームの整備推進などを記している。23区内で特養を整備しても限界がある。在宅介護でどこまで対応し、退職後など早い段階での他地域への自主的な移住をどう進めるかについても議論が必要だろう。
もちろん、こうした課題の解決には国の施策が欠かせない。都知事として政府にどんな対応を促していくかも大事な要素となる。地に足のついた政策を今後の論戦を通じて語ってもらいたい。