本書は山本七平の未発表原稿を集めたものだが、戦争責任を論じているのがおもしろい。彼の意見は明快だ。もちろん最大の責任は軍にあるが、それを止める権限は天皇には実質的になかった。開戦を止められなかった責任は、軍事予算を承認した内閣と議会にある。
これはイギリスでは明確に意識されており、シビリアン・コントロールとはその意味だ。高橋是清はこれを認識して軍事費の膨張を止めようとしたが暗殺され、不拡大方針の宇垣一成が1937年に組閣に失敗したため、内閣が軍をコントロールできなくなった。
この意味で日米開戦への決定的な分水嶺は、二・二六事件による高橋財政の挫折だった。今の日銀の財政ファイナンスは、これと同じだ。黒田総裁は高橋のように安倍政権をコントロールするつもりだったのだろうが、残念ながら無血の二・二六事件は起こってしまった。
日銀という「打ち出の小槌」があると思っている首相は増税を再延期し、「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」と称して、大規模な補正予算を組もうとしている。その先に待っているのは、財政ファイナンスの行き詰まりによる金利上昇だ。歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は愚かな政治家による笑劇として。
続きは7月25日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。
これはイギリスでは明確に意識されており、シビリアン・コントロールとはその意味だ。高橋是清はこれを認識して軍事費の膨張を止めようとしたが暗殺され、不拡大方針の宇垣一成が1937年に組閣に失敗したため、内閣が軍をコントロールできなくなった。
この意味で日米開戦への決定的な分水嶺は、二・二六事件による高橋財政の挫折だった。今の日銀の財政ファイナンスは、これと同じだ。黒田総裁は高橋のように安倍政権をコントロールするつもりだったのだろうが、残念ながら無血の二・二六事件は起こってしまった。
日銀という「打ち出の小槌」があると思っている首相は増税を再延期し、「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」と称して、大規模な補正予算を組もうとしている。その先に待っているのは、財政ファイナンスの行き詰まりによる金利上昇だ。歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は愚かな政治家による笑劇として。
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