言論外交の挑戦

第4回日韓共同世論調査 日韓世論比較結果

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⇒日韓両国の国民感情が改善に向かい始めた背景に何があるのか
⇒「第4回日韓共同世論調査」をどう読み解くか
⇒第4回日韓共同世論調査 記者会見 報告

特定非営利活動法人 言論NPO ・ 東アジア研究院特定非営利活動法人 言論NPO ・ 東アジア研究院

【調査協力】
日本:輿論科学協会 韓国:Hankookリサーチ 
/ 2016年7月

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調査の概要

 日本の非営利組織である言論NPOと韓国のシンクタンクである東アジア研究院(EAI)は、日韓の両国民を対象とした共同世論調査を2016年6月から7月にかけて実施した。この調査の目的は、日韓両国民の相手国に対する理解や認識の状況やその変化を継続的に把握することで、両国民の間に存在する様々な認識ギャップの解消や相互理解の促進に貢献することにある。

 この調査結果は、9月2日に開催される日韓の民間対話「日韓未来対話」の場でも報告され、対話と連動する形でこの調査が使われることになる。

 日本側の世論調査は、日本の18歳以上の男女を対象に6月18日から7月3日まで訪問留置回収法により実施された。有効回収標本数は1000である。回答者の性別は、男性が48.8%、女性が51.2%。最終学歴は小中学校卒が8.0%、高校卒が47.0%、短大・高専卒が19.9%、大学卒が22.3%、大学院卒が1.5%。年齢は20歳未満が3.0%、20歳から29歳が11.7%、30歳から39歳が15.1%、40歳から49歳が16.9%、50歳から59歳が14.4%、60歳以上が38.9%となっている。

 これに対して韓国側の世論調査は、韓国の19歳以上の男女を対象に6月16日から7月5日まで調査員による対面式聴取法により実施された。有効回収標本数は1010である。回答者の性別は、男性が49.5%、女性が50.5%。最終学歴は小学校以下が7.5%、中学校卒が10.2%、高校卒が37.5%、大学在学・中退(専門大学を含む)が12.1%、大学卒が31.8%、大学院卒が0.8%。年齢は20歳未満が1.8%、20歳から29歳が16.1%、30歳から39歳が17.8%、40歳から49歳が20.9%、50歳から59歳が20.0%、60歳以上が23.4%となっている。




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1-1.日韓両国民の相手国に対する印象

日韓両国民の相手国に対する印象は依然悪いものの、改善が見られる。

 韓国に対する印象を、「良くない」(「どちらかといえば」を含む、以下同様)と回答した日本人は44.6%となった。本調査では、2013年の37.3%から、2014年が54.4%、2015年が52.4%と悪化していたが、今年になって改善した。一方、「良い」(「どちらかといえば」を含む、以下同様)は29.1%となり、こちらも2014年(20.5%)、2015年(23.8%)から改善している。

 他方、韓国人では、日本に対する印象を「良くない」と回答した人は、61.0%と依然として6割を超える高水準となったが、昨年の72.5%からは11ポイント以上の大幅な改善となっている。「良い」と回答した人も、昨年の15.7%から21.3%に増加しており、感情悪化に歯止めがかかっている。

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1-2.相手国に対する印象の理由

 両国民ともに「歴史」と「領土対立」が相手国の印象に悪影響を及ぼしているが、政治指導者の言動に対する悪印象は両国ともに減少している。

 日本人が、韓国に対してマイナスの印象を持つ理由は、「歴史問題などで日本を批判し続けるから」が75.3%で昨年(74.6%)に引き続き7割を超えて最も多い。これに「領土対立」が39.9%(昨年36.5%)で続く構図は昨年と同様である。この1年で大きな変化が見られるのは、「韓国の政治指導者の言動に好感を持っていないから」が、昨年の28.1%から今年は17.9%と約10ポイント減少していることである。

 他方、韓国人が日本にマイナスの印象を持つ理由は「韓国を侵略した歴史について正しく反省していないから」が76.3%で昨年(74.0%)と同様に最も多い。そして、「領土対立」も70.1%(昨年69.3%)と7割を超え、この2つの理由が例年同様に突出している。この1年で大きな変化が見られるのは、日本世論と同様、「日本の政治指導者の言動に好感を持っていないから」が、昨年の24.7%から今年は14.6%へと10ポイント減少しており、政治指導者の言動に対する評価が改善していることである。ただ、「日本人は建前と本音が違うから」が昨年の16.7%から今年は24.2%に増加している。

 それに対し、相手国に対してプラスの印象を持つ理由として、日本人は「韓国のドラマや音楽などへの関心」を挙げる人が51.2%(昨年51.7%)で最も多く、これまでの調査と同様の傾向が見られる。

 韓国人では、「日本人は親切で、真面目だから」が69.8%と昨年の63.9%から6ポイント増加し、約7割になり最も多い。これに昨年同様「生活レベルの高い先進国」(48.8%、昨年は49.4%)が続いている。大きな変化が見られたのは、「同じ民主主義の国」で、昨年の8.9%からほぼ倍増して17.7%となっている。

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1-3.両国間の国民感情現状に対する意識

 日韓両国民の約6割が国民感情の現状を「望ましくない」、「問題だ」と認識している。しかし、そう判断する人は昨年より減少している。

 両国民間の国民感情が依然として悪い状況を、日本人の26.3%(昨年29.0%)が、「望ましくない状況であり、心配している」と考えている。さらに、「問題であり、改善する必要がある」は36.8%(昨年38.8%)となり、この2つを合わせると63.1%と6割超の日本人が国民感情の現状に対して問題意識を感じていることになる。ただ、昨年(67.8%)よりはやや減少した。

 これに対して韓国人では、国民感情の現状を、「望ましくない状況であり、心配している」が21.8%(昨年26.4%)、「問題であり、改善する必要がある」が37.0%(昨年40.8%)となり、6割近く(58.8%)の人が問題視していることになるが、こちらも昨年の67.2%からは減少している。

 一方、世論のこうした状況を「当然」だと考える人は日本では1割に満たなかったが、韓国では34.3%と昨年(28.1%)を上回り、3割を超えている。

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2.相手国に対する印象

2-1.相手国の「社会・政治体制」の認識

 日本人の約半数は現在の韓国を「民族主義」、韓国人の約半数は現在の日本を「軍国主義」と認識している。しかし、そうした認識は昨年からそれぞれ減少している。

 「相手国の現在の社会・政治体制」について、韓国を「民族主義」と考えている日本人は、48.1%で最も多いが、昨年の55.7%からはやや減少した。次いで、「国家主義」と見る人が30.2%だが、こちらも昨年の38.6%からは減少し、さらに3番目に多かった「軍国主義」との見方も昨年の28.9%から今年は23.5%に減少している。

 他方、韓国を「民主主義」と考える日本人は23.0%となり、昨年の14.0%から9ポイント増えている。

 これに対して韓国人は、現在の日本を「軍国主義」と考える人が49.6%で、調査を行ったこの4年間と同様に最も多いが、昨年の56.9%からは減少している。これに「国家主義」が36.5%(昨年34.3%)で続いている。昨年は2番目に多かった「資本主義」は32.1%(昨年38.9%)で今年は4番目だった。

 また、日本を、「覇権主義」と見る韓国人は24.7%となり、昨年の34.3%から大幅に減少し、「大国主義」との見方も昨年の26.5%から今年は20.5%に減少している。さらに、「平和主義」との見方が昨年の4.2%から今年は8.5%へと倍増している。

 日本を「民主主義」の国と見る人は20.7%で、昨年(22.2%)と同様に2割程度である。

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3.日韓関係の現在と将来に対する認識

3-1.現在と今後の日韓関係をどう見ているか

 現在の日韓関係を「悪い」と考える人は、日本人の5割、韓国人の6割超だが、それぞれ過去2年と比べると大幅に改善した。今後の日韓関係に関しては、両国で「変わらない」との見方が最も多く、昨年よりも増加している。

 現在の日韓関係について、「悪い」(「非常に」と「どちらかといえば」の合計、以下同様)と見る日本人は50.9%だった。依然として5割を超えているが、2014年の73.8%、2015年の65.4%からは大幅に改善している。

 韓国人でも、「悪い」との回答は62.3%と依然として高水準だが、こちらも2014年の77.8%、2015年の78.3%からは15ポイント以上の大幅改善となっている。

 今後の日韓関係の見通しについては、現状の日韓関係が「変わらない」と見ている人が、日本人で49.0%(昨年41.4%)、韓国人でも52.1%(昨年45.9%)と最も多く、それぞれ昨年よりも増えている。ただ、「良くなっていく」(「どちらかといえば」を含む)が、日本人では22.7%(昨年21.9%)、韓国人では23.3%(昨年19.0%)とそれぞれ昨年からやや増加しているほか、「悪くなっていく」(「どちらかといえば」を含む)」と見る人も、日本人では9.9%(昨年12.1%)、韓国人では18.5%(昨年28.4%)とそれぞれ昨年から減少しており、関係改善を期待する人が増えている。

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3-2.日韓関係の発展のためにすべきこと

 日韓関係発展のため、韓国人は「領土」「慰安婦」「歴史」への取り組みを特に重視しているが、日本人はそれらに加え「政府レベルの対話、信頼関係」「相互交流の拡大」も重視している。「北朝鮮の核問題」での日韓協力が、日韓関係の発展に寄与すると感じている韓国人は少ない。

 日本人が、日韓関係の発展のために両国がすべきことと考えているのは、「歴史認識問題の解決」が最も多いが、46.5%と半数に満たない。これに「竹島問題の解決」が39.0%で続き、さらに、「政府首脳レベルでのコミュニケーションと信頼関係の向上」(31.4%)、「従軍慰安婦問題の解決」(29.6%)、「国民間の文化、観光などの相互交流の拡大」(27.6%)なども3割前後見られる。

 これに対して、韓国人で最も多かったのは、「竹島問題の解決」の81.1%であり、次いで、「従軍慰安婦問題の解決」の75.7%、「歴史認識問題の解決」の74.9%となり、この3つの比率が韓国では際立っている。

 「北朝鮮の核問題解決に向けた協力」は、日本人では19.5%だったのに対し、韓国人では7.0%にとどまり、この問題を日韓関係発展のための行動と期待している韓国人は少ない。

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3-3.日韓関係の重要性をどう見ているか

 日韓関係が「重要である」と考える人は、昨年同様日本では6割、韓国では8割を超えている。

 日韓関係を「重要である」(「どちらかといえば」を含む)と考える日本人は62.7%(昨年65.3%)と6割、韓国人では、86.9%(昨年87.4%)と昨年同様8割を超えている。

 これに対して、日韓関係が「重要ではない」(「どちらかといえば」を含む)と考える日本人は13.9%(昨年15.7%)、韓国人は9.6%(昨年9.1%)にすぎず、両国民は日韓関係の重要性を強く認識している。

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3-4.中国と比較した場合の日韓関係の「重要性」と「親近感」

日韓関係と対中関係について、「どちらも同程度に重要」と考えている日本人は4割を超え、韓国人では5割を超えている。「韓中関係がより重要」と考える韓国人は35.1%で昨年(44.8%)から減少した。  親近感の比較では、「韓国により親近感を覚える」という日本人は4割近いが、韓国人では「日本により親近感を覚える」という人は1割にすぎず、「中国により親近感を覚える」という人が3割を超えて最も多い。

 日韓関係の重要性を、日中、韓中関係との比較で答えてもらうと、日本人では「どちらも同程度に重要である」が45.6%(昨年49.1%)で最も多い。

 他方、韓国人でも56.8%と半数超が「どちらも同程度に重要である」と回答し、昨年46.6%から10ポイント増加している。昨年調査では「韓中関係がより重要」が、44.8%と4割を超えており、「どちらも同程度」に並びかけていたが、今年は35.1%に減少している。

 また、相手国と中国でどちらにより親近感を感じるかと尋ねたところ、日本人では「韓国により親近感を覚える」が昨年の31.0%から38.2%に増加して最も多かった。昨年34.5%で最も多かった「どちらにも親近感を覚えない」は31.6%で今年は2番目だった。

 他方、韓国人では、「中国により親近感を覚える」人は、昨年の41.0%からは減少したものの、34.2%で最も多い。これに対して、「日本により親近感を覚える」との回答は12.8%(昨年11.1%)しかない。

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3-5.自国の将来にとって重要な国

自国の将来を考える上で、日本人は世界の中で「アメリカ」を最も重視している。しかし、韓国人は同盟国の「アメリカ」よりも「中国」を重視する人が多い。

 自国の将来を考えるにあたり、世界の中で最も自国との関係が重要だと思う国や地域を答えてもらったところ、日本人では同盟国の「アメリカ」が65.9%で最も多く、2番目に多かった「中国」(8.0%)を大きく引き離している。

 一方、韓国人では、同盟関係にある「アメリカ」(39.8%)よりも、「中国」を選ぶ人が多く、47.1%で最多となった。

 日本人で「韓国」と答えた人は1.7%、韓国人で「日本」と答えた人は2.6%にすぎなかった。

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4-1.相手国への訪問についての認識

 韓国への訪問を希望する日本人は4割、日本への訪問を希望する韓国人は6割を超え、共に昨年より増加している。

 韓国に「行きたい」という日本人は42.2%と昨年(40.7%)を上回った。これに対して、日本に「行きたい」という韓国人は63.8%(昨年59.2%)と6割を超えている。ただ、「行きたくない」という回答も、日本人では36.3%(昨年35.9%)、韓国人でも30.0%(昨年31.0%)とそれぞれ3割程度存在している。

 次に、相手国に行きたい理由を尋ねたところ、日本人では「自然や観光地への訪問」(59.5%)、「買い物」(55.5%)、「歴史・文化遺産への訪問」(40.3%)の順番となっている。

 一方、韓国人では、「自然や観光地への訪問」が79.2%と突出して多い。

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5.日韓両国の歴史問題に関する認識


5-1.歴史問題に関する日韓両国民の認識


 日韓両国ともに「両国関係が発展するにつれ、歴史認識問題は徐々に解決する」という楽観的な見方が増加している。

 日韓関係と歴史問題の関係について、日本人では、「両国関係が発展するにつれ、歴史認識問題は徐々に解決する」と楽観視する見方が、昨年の19.3%から10ポイント以上増えて30.2%となり、「両国関係が発展しても、歴史認識問題を解決することは困難」の28.1%(昨年35.1%)を上回っている。本調査を開始した2013年以降の3年間、「歴史認識問題を解決することは困難」という悲観的な見方が「歴史認識問題は徐々に解決する」という楽観的な見方を上回っていたが、今回初めて逆転した。

 これに対して、韓国人では、「歴史認識問題が解決しなければ、両国関係は発展しない」と、歴史問題の解決を日韓関係の前提とする見方が、42.8%で最も多いが、昨年の52.5%からは10ポイント減少している。そして、「両国関係が発展するにつれ、歴史認識問題は徐々に解決する」という回答が昨年の20.9%から10ポイント以上増加して32.9%となり、調査開始以来初めて3割を超えた。

 その歴史問題で解決すべきものとしては、日本人で最も多いのは、「韓国の反日教育や教科書の内容」が59.9%(昨年52.5%)で、これに「日本との歴史問題に対する韓国人の過剰な反日行動」が53.6%(昨年52.1%)が続いている。

 これに対して、韓国人では、「日本の歴史教科書問題」が71.9%(昨年76.0%)が最も多い。これに続いているのが、「日本人の従軍慰安婦に対する認識」の59.7%だが、昨年の69.8%からは大きく減少している。同様に減少幅が目立ったものとしては、「日本人の過去の歴史に対する反省や謝罪の不足」が、昨年の59.6%から今年は42.4%に減少している。

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5-2.慰安婦合意の評価

 日韓慰安婦合意について、日本人では「評価する」が半数近くなっているが、韓国人では「評価しない」が4割近くあり、「評価する」を上回っている。

 2015年12月の日韓外相会談では、日本政府が予算を拠出して元慰安婦の支援を行うことで、慰安婦問題は最終的かつ不可逆的に解決されるとの日韓両政府の合意がなされた。これに対する評価を尋ねたところ、日本人では「評価する」(「非常に」「一定程度」の合計、以下同様)との回答が、47.9%となり、「評価しない」(「全く」「あまり」の合計、以下同様)の20.9%を大きく上回っている。

 一方、韓国人では、「評価しない」が37.6%と4割近くあり、「評価する」の28.1%を上回り、日本側と逆の結果となった。

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6-1.日中韓サミット議論テーマについて

 日中韓サミットで議論すべきテーマとして、「北朝鮮の核問題」、「日中韓の関係向上に向けた広範な話し合い」の2つでは両国民の認識はほぼ一致しているが、韓国人の4割以上が選択した「歴史認識問題」、「首脳同士の信頼関係の向上」を選んだ日本人は2割に届かない。

 日中韓サミットが今秋にも開催される予定になっているが、この首脳会談の場において、最も議論してほしい課題を尋ねたところ、日本人では「北朝鮮の核問題」(44.7%)、「日中韓の関係向上に向けた広範な話し合い」(37.6%)の2つが特に多い。韓国人でも「北朝鮮の核問題」(38.4%)、「日中韓の関係向上に向けた広範な話し合い」(34.4%)というように、この2つを選んだ人は多く、この点では両国民の認識は一致している。

 他方、韓国人で最も多かったのは「歴史認識問題」の44.0%だが、これを選択した日本人は17.2%と2割を切っている。また、韓国人で2番目に多かった「首脳同士の信頼関係の向上」(42.6%)についても、これを選択した日本人は15.6%にとどまった。さらに、「東アジア地域における領土問題」を選択した日本人は12.0%だったのに対し、韓国人は5.0%であり、この点でも両国間に差が見られる。

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6-2.相手国首脳に対する印象

 日本人の朴槿惠大統領に対する印象はこの1年でやや改善したが、韓国人の安倍首相への「悪い印象」は昨年同様8割近い。

 日本人に韓国の朴槿惠大統領に対する印象を尋ねたところ、「悪い印象」(「大変」と「どちらかといえば」の合計、以下同様)を持っていると回答した人は36.6%で最も多いが、昨年の48.3%からは大幅に減少している。もっとも、「良い印象」(「大変」と「どちらかといえば」の合計、以下同様)は昨年の5.2%からは増えたが、それでも6.7%と1割未満であり、印象の好転にまでは至っていない。

 これに対して、韓国人では、日本の安倍晋三首相に対して「悪い印象」を持っているのは79.4%で、昨年の80.5%からわずかな改善にとどまっている。「良い印象」は昨年の2.1%からほぼ倍増したがそれでも4.1%にすぎない。

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7-1.10年後の朝鮮半島について

 10年後の朝鮮半島の姿について、日韓両国で「現状のまま」との見方が最も多いが、「南北の対立激化」を予想する見方がこの1年で増加している。

 10年後の朝鮮半島の姿について、日本人では、「現状のまま」と予想する人が40.2%(昨年42.1%)で最も多い。ただ、「韓国と北朝鮮との対立が激化する」が昨年の13.5%から今年は18.4%へとやや増加している。

 当事国である韓国でも、「現状のまま」が44.0%で最も多く、昨年の35.0%から9ポイント増えている。一方、「南北統一に向けた動きが始まる」と考える人は昨年の27.6%から今年は22.1%へと減少するとともに、「韓国と北朝鮮との対立が激化する」が昨年の10.6%から今年は15.4%へと増加している。

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7-2.朝鮮半島統一後の在韓米軍

 韓国人の6割近くが、朝鮮半島が平和的に統一された場合でも、引き続き在韓米軍は必要だと考えている。日本人の4割程度も必要だと考えているが、「わからない」という人も3割程度いる。

 朝鮮半島が平和的に統一された後の在韓米軍に関しては、当事国の韓国では、「必要だと思う」(「どちらかといえば」を含む、以下同様)が58.5%(昨年57.3%)が6割近くにのぼり、「必要ないと思う」(「どちらかといえば」を含む、以下同様)の36.5%(昨年31.0%)を大きく上回っている。

 これに対して、日本人でも39.5%(昨年44.6%)と4割程度が「必要だと思う」と回答し、「必要ないと思う」の31.0%(昨年28.4%)を上回っている。ただ、「わからない」も29.3%(昨年26.9%)と3割程度いる。

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8-1.米軍基地の役割

 自国内の米軍基地に期待する役割で、日韓両国民の認識の大きな違いの一つは、韓国人に比較して、日本人の方が「中国への対抗」を期待していることである。

 自国に存在する米軍基地に期待する役割として、日本人では「日本の防衛」が51.9%で最も多いが、「東アジア地域全体における平和の維持」(35.5%)、「中国に対する対抗」(29.3%)を選択した人も3割程度見られる。

 一方、韓国人では、「朝鮮半島情勢の安定への貢献」が64.5%で突出して多い。「東アジア地域全体における平和の維持」は28.8%と3割を切り、「中国に対する対抗」は16.9%にすぎなかった。

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8-2.軍事的脅威と日韓間の軍事紛争に関する認識

 「日本」を軍事的脅威と考える韓国人は、昨年からは2割以上減少したが、それでも依然として4割近く存在している。日本人では、「北朝鮮」、「中国」、「ロシア」がそれぞれ昨年から大幅に増加している。また、日韓間の軍事紛争については、日本人では6割超が「起こらない」と考えているが、韓国人では「数年以内」と「将来的に」を合わせると昨年同様4割近くが「起こる」と予想している。

 日本人が、最大の軍事的脅威と見なしているのは、「北朝鮮」であり、昨年の71.6%から9ポイント増加して80.4%となり、8割を超えている。これに「中国」が72.8%で続き、こちらも昨年の64.3%から増加している。また、「ロシア」が昨年の36.0%から今年は50.0%へと大幅に増加している。「韓国」を軍事的脅威と見做している日本人は、昨年の11.2%よりやや増加したが、それでも16.9%にすぎない。

 これに対して、韓国人が考える軍事的脅威も、「北朝鮮」の83.4%(昨年も83.4%)が最も多い。ただ、それに続くのは今年も「日本」であり、昨年の58.1%から2割以上減少したものの、それでも37.7%と4割近く、「中国」の36.0%(昨年36.8%)と同水準になっている。

 なお、韓国人が日本を軍事的な脅威と感じる理由で最も多いのは、「日本が独島の領有権を主張しているから」の60.1%で、これが突出している。これに「日本の戦争責任について、未だに日本の政治の中であいまいな姿勢が残っているから」(48.6%)、「日本政治の一部に右傾化の傾向が存在するから」(42.0%)が続いている。

 また、日韓間の軍事紛争の可能性について、日本人では「起こらないと思う」が、65.8%(昨年65.7%)と6割を超えている。「数年以内に起こると思う」(0.4%、昨年は0.7%)と「将来的には起こると思う」(7.7%、昨年は8.6%)の2つを合計しても、軍事紛争を懸念する日本人は8.1%と1割に満たない。

 一方、韓国でも「起こらないと思う」が48.8%(昨年48.2%)で最も多いが、「数年以内に起こると思う」(4.5%、昨年は5.3%)と、「将来的には起こると思う」(33.2%、昨年32.5%)の2つを合わせると、日本との軍事紛争を予想する人が37.7%と4割近く存在している。

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8-3.領土問題の解決策

 領土問題の解決策として、日本人で最も多い回答は「国際司法裁判所に提訴して判断を仰ぐ」である。他方、韓国人では「2か国間の対話で平和的解決を目指す」が最も多い。ただ、「実効支配を強める」べきと考える韓国人も16.0%いる。

 東アジア地域の領土問題の解決策について、日本人で最も多いのは、「国際司法裁判所に提訴して判断を仰ぐ」の31.4%(昨年38.8%)で、これに「2か国間の対話で平和的解決を目指す」が21.5%(昨年も21.5%)で続いている。

 これに対して、韓国人では、「2か国間の対話で平和的解決を目指す」が39.6%(昨年33.4%)で最も多く、これに「国際司法裁判所に提訴して判断を仰ぐ」が19.0%(昨年25.0%)で続いている。ただ、「実効支配を強め、他国の介入を阻止する」も16.0%(昨年17.9%)存在する。

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8-4.日韓両国の核武装への賛否

 日本人では日本と韓国の核武装に「反対」する人が8割を超えている。これに対して、韓国人の8割が日本の核武装に「反対」する一方で、6割は自国の核武装に「賛成」している。

 日本の核武装の是非について、日本人では80.3%が「反対」しており、韓国人でも82.2%が「反対」している。しかしその一方で、韓国人の59.0%は自国の核武装の是非について「賛成」し、「反対」の36.1%を大きく上回っている。

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8-5.米大統領選と北東アジアの安保環境

 日韓両国民の約6割が、米大統領選の結果、「トランプ大統領」が誕生すれば北東アジアの安保環境は「より不安定化する」と考えている。

 2016年11月のアメリカ大統領選の結果、ヒラリー・クリントン大統領が誕生した場合、日本人の42.4%は北東アジアの安全保障環境への「影響はない」と考えている。「より安定化する」との見方は18.8%と2割を切っている。

 韓国人でも「影響はない」との見方が39.8%で最も多い。ただ、「より安定化する」との見方も37.8%と4割近く存在する。

 一方、ドナルド・トランプ大統領が誕生した場合、日本人では60.9%、韓国人でも56.4%と両国で約6割の国民が「より不安定化する」と懸念している。

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9-1.日韓の経済関係

 日韓の経済関係に関しては両国ともに、相手国の経済発展は自国にもメリットである、という認識が最も多い。

 日韓間の経済関係について、「日本にとって韓国の経済発展はメリットであり、必要である」(「どちらかといえば」を含む、以下同様)との見方を持つ日本人は52.4%(昨年49.5%)となり、韓国の経済発展は日本にとってもメリットとの認識が半数を超えている。

 韓国人でも、この「メリット」との見方が、44.6%(昨年46.6%)であり、「韓国にとって日本の経済発展は脅威である」(「どちらかといえば」を含む)との見方の37.6%(昨年37.0%)を上回った。

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9-2.経済関係が重要な国・地域

 日本人が自国経済にとって最も重要だと考える国は、「アメリカ」(77.3%)であり、続いて「中国」(63.0%)となっているが、その他にも「ASEAN」、「韓国」、「EU」、「インド」を選択した人も3割前後見られる。他方、韓国人が最も重要だと考えるのは「中国」で8割を超えている。続いて、「アメリカ」(68.3%)、「日本」(36.9%)となっているが、この3か国に回答が集中している。

 自国経済にとって特に重要だと考える国について、日本人の77.3%が「アメリカ」と回答し、「中国」が63.0%を大きく上回っている。ただ、日本人の場合、「ASEAN諸国」(34.8%)、「韓国」(32.2%)、「EU」(32.2%)、「インド」(28.6%)などを選択した人もそれぞれ3割程度見られる。

 他方、韓国人では「中国」が81.1%で最も多く、「アメリカ」(68.3%)を10ポイント以上上回っている。「日本」を選択した人も36.9%と一定数見られるが、他の国・地域はいずれも1割前後にとどまっている。

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9-3.韓国のAIIB参加の是非

 韓国人の6割超が自国のAIIB参加を支持している。他方、日本人では6割が「わからない」と回答し、「支持」しているのは1割に満たない。

 アメリカからの不参加の要請にも関わらず、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を決めた韓国政府の判断について、韓国人の64.8%が「支持する」(「強く」「どちらかといえば」の合計、以下同様)と評価し、「反対する」(「強く」「どちらかといえば」の合計、以下同様)の13.9%を大きく上回っている。

 一方、日本人では、63.9%が「わからない」と回答するなど、評価しかねている。「反対する」は28.0%、「支持する」は7.9%だった。

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10-1.自国のメディア報道は客観的で公平か

 自国メディアの日韓関係に関する報道の客観性・公平性について、日本人では、「どちらともいえない/わからない」が最も多いが、韓国人では約6割が「客観的で公平な報道」をしていないと感じている。

 日本人では、日本のメディアが日韓関係の報道に関して「客観的で公平な報道をしているか」ということに関して、「どちらともいえない/わからない」という判断しかねている回答が51.4%(昨年43.0%)と最も多い。これに「そう思わない」の27.0%(昨年28.2%)が続き、「そう思う」の21.3%(昨年28.8%)を上回っている。

 これに対し韓国人では、「そう思わない」が58.9%(昨年51.7%)と6割近くになっている一方で、「そう思う」は18.1%(昨年26.5%)と2割未満にとどまっている。

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10-2.インターネット上の世論は適切な民意なのか

日本人の4割、韓国人の6割が、「ネット世論は民意を適切に反映していない」と感じている。

 インターネット上の世論が民意を適切に反映しているのかについて、日本人では、「適切に反映してはいない」(「あまり」を含む、以下同様)との見方が、42.0%(昨年42.9%)と4割を超えた一方で、「適切に反映していると思う」は9.3%(昨年11.5%)とわずか1割にとどまった。ただ、「どちらともいえない/わからない」と判断しかねている人も48.3%(昨年45.3%)と半数近くいる。

 他方、韓国人では、「適切に反映していない」が昨年の51.2%から増加して60.1%と6割を超えている。これに対し、「適切に反映している」も昨年の35.2%から今年は22.1%に減少している。

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11-1.日韓両国民の直接交流の度合い

 日本人の韓国への訪問経験は2割、韓国人の日本への訪問経験は3割程度であるが、この1年で3ポイント増加している。日本人の7割以上、韓国人の8割以上が相手国民に知り合いを持っていない。

 日本人のうち、韓国への訪問経験が「ある」と回答した人は22.7%(昨年26.0%)、韓国人も29.4%(昨年26.0%)にとどまっている。ただ、韓国人では調査開始以来4年連続で「ある」が増加している。

 また、日本人では74.8%(昨年75.7%)、韓国人では85.9%(昨年88.2%)が「相手国の国民に知り合いはいない(いたことはない)」と回答しており、両国民ともに相手国との直接交流の度合いが極めて乏しい。

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11-2.相手国の情報への関心度や情報源

相手国に関する情報は、両国民ともに9割以上が「自国のニュースメディア」から得ており、特に「テレビ」に依存している。ただ、韓国では「韓国のテレビドラマ等」や「家族、知人などの経験」を情報源とする人も4割を超えている。

 両国民ともに相手国に関する情報源は9割以上(日本は92.1%、韓国は93.7%)が「自国のニュースメディア」と回答、とりわけ「テレビ」に依存している。その他の情報源として、韓国では「韓国のテレビドラマ・情報番組、映画作品」(46.8%)、「家族、知人などの経験」(45.1%)を選ぶ人もそれぞれ4割以上いた。

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TEL:03-3548-0511
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