初めに、これから記載するのはHNrenoreno氏がpixivとTwitter上にて無料配信している「BL麻雀漫画」についての記事です。
ちなみに、renoreno氏は最近実録漫画「ネットで出会って30分で結婚を決めた話」で商業デビューを果たして、それがWEB広告にもなったのでそちらのほうで知っている方の方が多いかもしれませんが、今回はそちらについては触れません。ご了承ください。
【一次創作同人漫画だからこそ得られたもの】
しょっぱなからマイナスな方向に発言してしまうが、残念なことにrenoreno氏は決して絵の上手い方ではない。デッサンの歪み、線の粗さ、背景の描き方、まったく描けない人間から比べれば上手いものの決して玄人レベルには達していないのである。
だが、pixiv上ではそんな彼女の漫画が他の絵だけは凄まじく上手い作品を引き離し閲覧数67305、評価回数903、総合点8986という破格の人気を集めている。これは彼女の漫画が面白いという単純な理由はまずは置いて、一重に商業作品ではないという点が大きいと述べておこう。
商業作品では前提としてお金を支払わなければ中身が分からない。内容が分からない以上当たり外れが大きく購入者も慎重にならざるを得ない。よって表紙の力というものが大きく影響し、表紙を、つまり絵を上手く描けるか描けないかが購買力に直結するのである。
しかし無料公開されている一次創作同人漫画においては、まず内容を見るまでのハードルが低い。時間の空いたときにふと興味をそそられればすぐに内容を開くことが出来るからだ。
商業であれば彼女の作品はここまで人気は出なかっただろう。彼女の作品がここまで受け入れられたのは一次創作同人だったからだ。筆力を超えて、面白い作品をまず読んでもらえたことが最大の要因だったのである。
【BL麻雀漫画の面白さとは】
BL麻雀漫画の面白さは人間同士のドラマの組み立て方にあると私は考えている。あらすじとしては、過去に影を持つ謎の留年先輩とまっすぐな気性の後輩が麻雀を通して出会い仲を深めていくことになる。麻雀を打ち続けていくうちに後輩は先輩の秘密を知り、その過程で気づけば恋に落ちていた、といった流れだ。
このあらすじだけ抽出すると麻雀を題材にしたという点のみBL漫画としては珍しいが、それ以外についてはとりわけ珍しいものではない。はっきり言ってベタともいえる。
だがベタと一言で切って捨てられない魅力がこの作品には詰まっている。その生い立ちと境遇のためになかなか友達が出来ずに孤立しがちな先輩が、つい作ってしまう心の壁のようなものを無垢な後輩が正面から打ち壊していく図というのはオタクには男女問わず受けいられやすい題材だ。ただし、その題材故にどうしても青臭くうすら寒くなりやすい。それを上手くくどくならないように処理してみせるrenoreno氏の話の構成技巧は見事としか言いようがない。
ぶつかり合う人間関係があってこそBLの萌えは生まれるものである。そこは切っても切り離せない。話しの面白さに大きく関与する。しかし人間関係の扱いや表現は難しい。より深い萌えを追及すると失敗し、なにもかもがくどくなる。嘘くさくなる。
そのように、うかつに扱えば臭くなるテーマを、彼女はその一級のセンスで調理し、読者に素晴らしい萌えを提供してくれているのである。
【筆力を問題としない人気と面白さ】
漫画において画力は一定は必要である。それは商業漫画での話だ。まずネットで無料公開されている作品においてはそこまで重要な問題ではない。
そして、その上で面白い作品を読者に提示してみせることが何より重要である。BL漫画においてそれは、どれだけ萌える作品を読者に見せられるかということだ。
どうすれば萌えるか、それは個人の趣味嗜好それぞれ違うが共通して言えることは必ずそこに人間の心の機微、人間同士のぶつかり合い、ドラマが必要なのである。そのドラマを上手く使い来なし表現できているrenoreno氏の作品は、そのネット上の評価に値するものと言っていいのである。
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