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【芸能・社会】

花總エリザベート 歌唱に鳥肌 絶賛の嵐

2016年7月20日 紙面から

有名な肖像画を思わせるゴージャスなエリザベートにふんした花總まり(東宝提供)

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 花總エリザベートが、スゴイことになっている。東京・帝国劇場で公演中のミュージカル「エリザベート」(小池修一郎演出・訳詞)。昨年、宝塚時代に初演した花總まり(43)が、約16年ぶりに演じて、菊田一夫演劇賞大賞を史上最年少で受賞。その再演で、さらに目覚ましい進化を遂げ、絶賛の声が絶えない。一時は活動を休止した元娘役トップが今、揺るぎないエリザベート女優として輝きを放ち始めた。

 冒頭、15歳のシシィ(エリザベートの愛称)を演じる花總は、見た目も歌声も全く違和感がない。一幕ラストシーンは、有名な肖像画から抜け出たかのよう。波乱に満ちた皇后の生涯をたどる物語で、花總は年齢と共に立場や境遇が変わるエリザベートを的確自在に演じて、観客を離さない。

 「くるくる変わる可愛らしい表情、皇后になってからの美しく神々しいまでの姿に涙がとまりませんでした」

 「まるで本物が乗り移っているかのような素晴らしさ、気品と品格の輝き」

 「圧倒的な歌唱に鳥肌がたちました」

 観客の声が次々と劇場に寄せられている。昨年の評判が評判を呼び、前売り券は完売。連日満席を記録し続けている。

 宝塚時代に名演と評され、ファンの間では「レジェンド」と言われていた花總。東宝版は、2000年初演。男役のトートを引き立たせた宝塚版と違って、エリザベートが全面に出るウィーン版に近い。花總は、宝塚で96年の初演ほか2度「エリザベート」に出演。退団後、活動を休止したが、4年のブランクを経て2010年に復帰。昨年、キャスト、演出を新たにした「エリザベート」に抜てきされて、期待に応えた。

 今回さらに進化を感じさせるのは、歌の力が大きい。宝塚時代からの恩師で同作の音楽監督を務める甲斐正人さんは、「どうしても芝居で説得しようとしていたのを、歌でのびやかに説得できるようになった。そこがもう一つ大きな感動を呼んでいるのでは」。ビブラートを効かせた宝塚の伝統的な歌唱法も改め、本場の作者を納得させるレベルに達した。

 「歌い方をつかんだことで、もっと伸びますよ」と甲斐さん。「彼女の成長は、日本のミュージカルが大きくなっていくことにつながる」とも。ウィーン版を知る専門家の中には、「気品のある美しさは花總がまさっている」との声もあがっている。  (本庄雅之)

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◆花總まりに聞く

 −毎日どんな心境で舞台に

 開演前に花總まりっていう人物はおいといて、とにかく物語の中に入って、自然に人生を全うできたらいいな、と。

 −一生を演じるすごさがありますね

 そうですね。公演がある日は朝起きた瞬間から、心にありますね。だからあまり気が楽ではないというか、公演中、ずっとそうです。

 −昨年からさらに歌に深みが出たと評判です

 ボイストレーニングを続けているので、その積み重ねが何か変化をもたらしたのかも。それと、私はどちらかと言うと歌よりも感情がまさっていたので、曲をまずちゃんと歌う、そこに感情をのせていこうとアドバイスをいただいたので、そこを意識しています。

 −昨年3カ月間演じきったことが自信に?

 いえ、自分の中では思う通りに表現できないところもありますし、まだまだだなって思います。

 −これからもエリザベートを演じ続けてほしいという声が多いです

 私にとってもご縁のある特別な作品ですが、いつも今回が最後と思うようにしています。感謝しながら大切に一回一回思い残すことなくやりたいと思っています。

◆26日まで東京・帝国劇場

<公演予定> 東京公演は26日まで。その後、博多座(8月6日〜9月4日)、大阪・梅田芸術劇場(9月11日〜30日)、名古屋・中日劇場(10月8日〜23日)。

◆もう一人は蘭乃はな

<ダブルキャスト> 主要人物は、ほとんどダブルキャスト。もう一人のエリザベートは、蘭乃はな(29)。花總に憧れて宝塚入りした元花組トップ娘役。退団公演でエリザベートを演じた。

<物語> 約700年続いたハプスブルク家(オーストリア・ハンガリー帝国)の崩壊を、皇后エリザベートの生涯を通じて描く。黄泉(よみ)の帝王トートとの愛という大胆な発想と名曲のオンパレードで世界12カ国、7つの言語で上演され、1000万人を動員。ミヒャエル・クンツェ脚本・歌詞、シルヴェスター・リーヴァイ音楽・編曲。

<花總まり(はなふさ・まり>) 1973(昭和48)年2月28日、東京生まれ。日本女子大学附属高校出身。91年宝塚歌劇団に入団。雪組、宙組で史上最長の12年3カ月娘役トップ。06年に退団後、活動休止。10年舞台復帰。母親は元松竹歌劇団の青江奈美。特技はバイオリン。163センチ。

 

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