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【大相撲】

幕尻の荒鷲が4連勝 7場所ぶり復帰の幕内で自身初

2016年7月14日 紙面から

豊響(右)を突き落としで破る荒鷲=愛知県体育館で(市川和宏撮影)

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◇名古屋場所<4日目>

(13日・愛知県体育館)

 モンゴル出身の再入幕で、幕尻の荒鷲(29)=峰崎=が幕内初の初日から4連勝。横綱白鵬は栃煌山を、綱とりの大関稀勢の里は隠岐の海をともに問題にせずに寄り切って、初日から4連勝とした。横綱鶴竜は腰を痛めて休場した。

 本名のドゥルゴゥーンとは、モンゴル語で「穏やか」という意味。穏やかな笑顔の裏に闘志を秘める荒鷲が、7場所ぶりに復帰した幕内で、自身初の初日から4連勝と乗っている。

 豊響の重い当たりを踏み込んで残し、左からの突き落とし。「立ち合いがよかったです」と温厚な性格そのものの、優しい笑みを浮かべた。

 名古屋場所は転機の場所でもある。体重がなかなか増えず、幕下に転落していた2013年の名古屋場所。「空腹の時間を作らなければ体重は増えるとアドバイスをされた」。それからは稽古前にコンビニで買ったおにぎりを食べたり、昼寝から起きた午後4時に「プロテインでも何でもいいから口に入れた」。寝る直前には夜食を詰め込んだ。そんな生活を続けたら、110キロ半ばの体重が1カ月で10キロ増え、半年後に4度目の十両昇進を決めたときは125キロになっていた。

 今もそれは同じで、取組が終わるとすぐプロテインを飲み、「寝る前には夜食を食べる」。一日に4食から5食を食べまくる生活を続ける。

 関取が目前だった西幕下20枚目、19歳のとき左肩を脱臼し、そこから休場が続いた。「7、8回は抜けた。やめようか悩んだときもある」と心が折れかけたが、同じく脱臼癖のあった千代の富士(現九重親方)のビデオを「相撲博物館で借りて全部見た。一日で腕立てを700回もやっていたんですね」。自身も腕立て伏せで肩を強化した。

 苦労人だが格闘家としてのDNAは一級品だ。父・エレヘバヤルさんはモンゴル相撲の小結で、レスリングでソウル五輪に出場し4位。翌年、スイスで開催された世界選手権では銅メダルを獲得している。

 しこ名に「鷲」が使われているが「まだ見たことがない。動物園に見に行こうかな」と笑わせる。00年春場所で東前頭14枚目の貴闘力が史上初の幕尻優勝を飾った。そのときは、まだ半枚下の西前頭14枚目に若の里がいた。荒鷲は正真正銘の幕尻。29歳の苦労人らしく、一番下から大空へ羽ばたくのも悪くない。(岸本隆)

 ▼荒鷲毅(あらわし・つよし) 本名・エレヘバヤル・ドゥルゴゥーン。1986年8月21日生まれ、モンゴル出身の29歳。185センチ、134キロ。荒磯部屋に入門し、2002年九州場所で初土俵。新十両は11年名古屋場所。新入幕は14年夏場所。初土俵から所要68場所での新入幕は外国出身力士として戦後2位のスロー昇進だった。最高位は西前頭8枚目(14年秋場所)。得意は右四つ、寄り、上手投げ。

 

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