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【改憲始動(2)】
テロ・大災害時に首相・内閣の権限強化「緊急事態条項」 改憲政党間で意見割れるが…「憲法は緊急時こそ真価問われる」
野党第一党の民進党はさらに後ろ向きだ。岡田克也代表は今年1月、自民党の緊急事態条項について「緊急事態になれば、法律がなくても首相が政令で法律を履行でき、権利を制限できる。恐ろしい話だ。ナチスが権力を取る過程とはそういうことだ」と激しく批判している。
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こうした状況を踏まえ、自民党が議論の“誘い水”として各党に提案を検討しているのが、緊急時に国会議員の任期延長を可能とする特例の新設だ。
自民党の改憲草案では、首相や内閣の権限強化に加え、「(緊急事態の宣言が効力を有する期間)衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる」と明記している。国会議員の任期は法律ではなく、現行憲法の45条と46条に明記されており、特例で任期延長を認めるには憲法改正が必要になる。民進党や公明党の幹部も緊急時に国会議員が不在となる事態を避けるための改正の必要性は認めており、自民党は「折り合える一致点」ととらえているのだ。
ただ、民進党はそもそも「安倍政権下の憲法改正」に反対の立場。現行憲法を一字一句変えたくない護憲勢力の激しい抵抗も予想され、政党間で合意できるかは不透明だ。
西氏はこう指摘する。「国民の生命を守ることが立憲主義の前提だ。基本法に緊急事態条項を設けているドイツの著名な憲法学者は、『憲法は、平時においてよりも、緊急時においてこそ、その真価が発揮されなければならない』と語っている」