アメリカにおいては化粧品による皮膚障害は日本よりも早くから問題にされ、
各化粧品メーカーが収集した皮膚障害などの副作用の症例は、FDA
(食品医薬局)へ報告するように義務付けられていますが、当時、日本に
おいては化粧品の安全性については厚生省の許可基準を満たしているのだから
問題はなく、皮膚障害が起こるのは個人の特異体質によるものだ、という
見解が支配的でした。
そうした従来の、メーカーに有利な見解をくつがえしたのが、70年代後半から
相次いで起こった化粧品メーカーと使用製品の実名を挙げて化粧品により
皮膚障害を告発する運動の高まりです。
76年には大阪府立消費者センターで「化粧品公害被害者の会」が旗揚げし、
全国各地で化粧品メーカーを相手として皮膚障害による損害賠償を求める
裁判が起こされました。
77年に18名の女性が大手7社の化粧品メーカーに対して
1億7000万円の賠償を求める裁判を起こし、81年にメーカー側は責任を認め、
5000万円を支払っております。
化粧品による障害のなかでも、とくに大きなショックを女性に与えたのは、
「黒皮症」です。
「女性顔面黒皮症」ともいわれますが、女性だけでなく、
男性にも生じます。
読んで字のごとく、黒皮症は顔の皮膚が黒くなる症状
ですが、最初から黒くなるわけではありません。
最初は、化粧後になんとなく顔が赤みをおび、ほてりやかゆみを感じるようになります
。顔がふくらむような膨張感をおぼえることもあります。
これらの症状が毎日起きるというわけではなく、
一時、消えたかと思うとまた起こるという具合に継続的に繰り返されます。
そのうちに顔にシミが出てきます。シミは赤黒から紫灰色をおびた褐色で、
網目状に広がっていきます。
やがてその網目に広がった部分が、まるでそこだけ
入れ墨をしたように黒くなってしまいます。
黒皮症の特色は、増加したメラニン色素が
表皮にとどまることなく、真皮にまで沈着してしまうことです。
そのため、症状が進んだ場合にはなかなか簡単には回復しません。
黒皮症の被害は深刻です。
外出もできず毎日家で泣いて暮らしている、ぎょっとする視線に
耐えきれず職場をやめた、こんなお化けのような顔になって
人生に絶望した、あとは自ら命を絶つ道しか残されていない…。
<黒皮症の犯人正体は?>
なぜ化粧品を使って黒皮症のような皮膚障害が起こるのか。
この課題に挑戦して、あらためて痛感したのは、化粧品はじつに多様な科学物質
の集合体である、という事実です。
化粧品の原料は、2500種類以上にも上ります。
これとは別に香料だけで5000種類以上の原料があります。このほかに新製品開発
の為に新しい化学物質が加わり、原料の種類は増える一方です。
化粧品の原料のなかには動物、植物、こんなものがと思われるものも、成分に
含まれています。これら、合計すると7000種類以上もの化学物質をさまざまな
分量で配合し、練り合わせたものが、化粧品と総称される製品である、といっても
過言ではありません。
黒皮症の犯人は、もちろんこれらの化学品原料のなかに潜んでいます。
といっても、その原因となる成分を7000種類ものなかから見つけ出すのは、
容易ではありません。しかし、化粧品原料を皮膚の安全性との関係で基材原料で
分解すると、種に7種類になります。黒皮症はこの7つの中の一つに原因しています。
さて、どれなのか、を考えていただくうえにも、主な7種類の基材原料を
提示しておきましょう。
さらにそこに、犯人推理のヒントとなるように、化粧品の安全性という視点から
見た場合、これまで皮膚障害を起こす接触原あるいはその可能性が疑われている
点も付言しておきましょう。
1.油脂…グリセリンと高級な脂肪酸との間で生じたエステルの総称で、
通常「油脂」と呼ばれる、いわゆるアブラ分。トリグリセリドをはじめ、
炭化水素、高級 脂肪酸、高級アルコール、ロウ類、ステロール類、
高級アルキルエーテル、リン脂質、シリコーン油など。多くの化粧品には
石油系油質が含まれている。油性原料のなかには、細胞膜などにおいて
脂質が形成している構造に乱れを生じさせるおそれがあるものもある。
2.界面活性剤…液体に溶け、界面に吸着して界面の性質を変える物質。
これを用いて溶け合わない水と油や顔料を練ってクリームやローションをつくる。
顔料の分散・湿潤、泡消しなどを助長するのにも使う。イオン系と非イオン系に
分類できるが、皮膚に対する刺激性は非イオンよりもイオン性のものが強い。
3.保湿剤・溶剤…いわゆる「しっとり感」を出すためや塗料の流動性を増加する
ために用いる。エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、
エタノールなどのアルコール類の刺激性を持つ。
4.樹脂類…化粧品に用いられる粉体や高分子物質には、スルホンアミド樹脂、
ホルマリン樹脂、メタクリレート樹脂、セルロースエステル樹脂、
カラヤガムなどがある。樹脂の配合成分や樹脂の劣化にともなう変質物質化によって、
皮膚に刺激作用がある場合もある。
5.防腐・殺菌剤…微生物による品質劣化や病原微生物の繁殖防止の為に用いられる。
クロロクレゾール、クロロキシレノール、ハロゲン化サリシルアニリドなど多数あるが、
それぞれ配合量規制が定められている。その機能上から細胞毒性を有するものが多く。
その毒性発揮が原因と見られる皮膚異常症例に関する報告は数多い。
6.色素…物体に色を与える成分で化粧品に色をつけるのに用いられる。
石油からタールを分離し合成してつくられたタール系色素のほかに天然系色素や染毛剤
に使われる参加型染料などがある。いくつかのタール系色素には発ガン性物質が認められ
るほか、皮膚に対しても強い感作性を示すものがある。天然系色素でも、クロロフィルや
コチニールには感作性を指摘する文献もある。
7.香料…よい香りを発散するために加える物質だが、安全上からするととにかく問題に
されがちな成分を含んでいるものも少なくない。ゲラニオールやシトロネロール等は、
香料の皮膚刺激性に関する試験でも他より強い刺激反応を示している。
以上の7つのなかに、黒皮症の原因となったものがあります。どれも怪し気に見えますが、
犯人は色素、正確にはタール系色素の一つである赤色219のなかに不純物として存在していた
スダンTという物質です。この他もタール系色素のなかには接触皮膚炎を起こすおそれが
ある物質がいくつかあることもわかっています。では、犯人の正体が判明して黒皮症は
なくなったかといえば、そうではありません。
たとえば、お風呂でからだを洗う時、ナイロンタオルでゴシゴシと強くからだを摩擦
したりして、黒皮症が生じています。また、衣服の染めに使われた染料が原因で、
黒皮症になった例もあります。
こう見ると、黒皮症の犯人は、スダンTだけではないことになり、今後の解明が待たれて
いる状況です。 化粧品には先の7種類だけではなく、まだまだ多くの添加成分が含まれて
います。その主なものだけでも、美白剤・漂白剤、制汗剤・デオドラント剤、
収れん剤・緩衝剤・中和剤、刺激剤、抗炎症剤、抗酸化剤などがあり、いずれも皮膚とは
密接な関係を持つものです。
<言うは易く行うは難し・安全な化粧品つくり>
黒皮症とタール系色素の赤色219との関係を突きとめたのは大阪大学医学部皮膚科の
グループですが、黒皮症と化粧品との因果関係を考えるなかで、いかに多種多様な
化学物質が化粧品に用いられているかを、いまさらながら知らされました。
香料を含めると7000種類もある化学物質の安全性を、自分たちの手で一つひとつ確かめる
などという作業は不可能です。それに新規開発の為に、毎年新たな化学物質が加わっている
状態です。
いうまでもなく、化粧品は、毎日、顔や肌に直接つけるものです。毎日、朝晩の2回、
洗顔クリーム、化粧水、クリームなどの化粧品類を使うとすると、1年で730回になり
ます。
18歳から使い始めて70歳まで使用するとすると、その間の52年間で37,960回。
1回でどれだけの量の化粧品を使うかは個人差がありますが、それにしても化粧行為を
通じて相当量の化学物質が肌に塗られ、浸透していく事は確かです。
このことを考えると、1日に口に入れる食品の内容が私たちの体の健康に大きく
影響するように、毎日肌につける化粧品の内容が私たちの皮膚の健康に大きく影響を
及ぼすのは、自明の理です。
もし毎日の食卓を飾る食品に毒性があれば、健康は確実に損なわれていきます。
最悪の場合は、死に至ります。
毎日肌につける化粧品に毒性があれば、皮膚の健康は
確実に損なわれていきます。
最悪の場合には、黒皮症のように顔の皮膚を変色させます。
いまでこそ"自然派化粧品"と称する製品は大手メーカーの一部も手掛けるようになっていますが、
当時の化粧品業界は、香料、香水、色あざやかなメーク製品が飛ぶように売れる状況でした。
売れるものをつくることが最優先であって、それによって生じる皮膚への障害は顧みられない
経営方針が、大手を振ってまかり通っていました。
一口に「安全な化粧品」といっても、現実にそれを商品として販売できるだけのものを
作り出すとなると、まさに言うは易く行うは難しの世界で、言うのはだれにでもできますが、
実行するとなると難しい事の連続でした。
安全な化粧品の開発には、石油系化学合成物質を
ふんだんに使う化粧品製造に比べて、はるかに困難な技術的な課題を乗り越えねばならず、
また製造上の少々の誤差も命取りになります。
<危険物>
界面活性剤など石油系の化学物質がシミやクスミの原因となり、肌の障害を引き起こす事も
明らかになり、これらの物質も配合成分から除外する改善にも取り組みました。
美肌を損なうシミなどの肌のトラブルがどのようにして生じるかは後述しますが、
その一つの原因は、界面活性剤が皮膚細胞を保護する皮脂膜を溶かしてバリアゾーンを
破壊する為、色素や香料、酸化防止剤や防腐・殺菌剤などの化粧品成分の化学物質が、
表皮や真皮の細胞に直接浸透することにあります。
この結果、外部からの異物の侵入を防御するために、細胞組織が萎縮し固くなり、
メラニン色素が以上に増殖し沈着します。これがシミになっていくのです。
化粧品の場合も同じです。バターイエローをはじめ、いくつかのタール系色素には
発ガン性が認められていますが、それらの色はあでやかです。黒皮症の原因となった
赤色219の色素を用いた化粧品の色も色あざやかだからこそ、多くの人が使用したのです。
化粧品が化学物質の固まりであることは前述しましたが、化学物質とは自然界に存在しない物質で、
人間が化学反応などを利用して人工的につくりだした物質です。
化粧という行為は、それら自然界に存在しない化学物質を肌に浸透させる行為でもあるのです。
農薬や化学肥料をふんだんに使うと、見た目にはきれいでおいしそうな野菜などの作物を、
手間を省いて効率的に大量につくることができ、短期間の生産性は大きく上がります。
しかし、農薬や化学肥料が浸透した土壌は劣化が速く、生産物の安全性にも問題があることは、
今日では広く知られています。
私たち人間の肌に関しても、全く同じ事がいえます。ふんだんに化学物質を用いた化粧品は、
石油系成分がたっぷり入った色素、香料、界面活性剤を基素材としているので、
見た目には色あざやかで魅惑的な香りを発し、つるつると塗りやすく、泡もよくたちます。
製造面からも、手間をかけずに効率的で大量な化粧品づくりができます。
十数年もの長期間使用できる利点もあります。しかし、そうした石油化学製品の成分が浸透した
肌の劣化は速く、化粧焼けの黒ずみやシミ、ソバカス、小ジワ、敏感肌、乾燥肌などのトラブル肌
の原因となります。
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