クーデター「事前に察知」 公務員処分5万人超す
【イスタンブール大治朋子】トルコの一部軍人によるクーデターが失敗した事件で、トルコ軍は19日声明を発表し、トルコ国家情報機構(MIT)が事件数時間前の15日午後4時ごろ、クーデター計画の存在を軍幹部に事前に通知していたと明らかにした。MITの情報がなければ事件は拡大した可能性があるが、阻止できなかった理由など疑問が残り、新たな議論を呼びそうだ。一方、トルコ当局は事件に関連し軍人らの拘束や教員の停職などを進め、5万3000人以上が粛清される異例の事態となっている。
軍の声明によると、MITの情報を基に参謀総長は「必要な全ての警告や指示を関係各所に出した」という。
一部地元メディアによると、クーデター実行犯らはMITの動きを察知し、当初16日午前3時だった作戦開始を15日午後9時ごろに前倒ししたという。
軍声明によると、実行犯らは参謀総長を拘束し、クーデター宣言文に署名し国営テレビで読み上げるよう脅したが参謀総長は拒否したという。ただ、事前に情報を得ながら拘束された経緯は不明だ。
また、エルドアン大統領は19日、休暇で滞在中のトルコ南西部マルマリスのホテルが実行犯らに攻撃されたが、間一髪でホテルを逃れたとCNNテレビに説明。「10〜15分遅れていたら、殺されていたか人質になっていた」と話した。あらかじめ避難していなかった理由は不明だ。
一方、半国営のアナトリア通信は19日、トルコ政府が事件の「黒幕」と見るイスラム教指導者、ギュレン師との関連が疑われるテレビとラジオ計24局の免許取り消しを決めたと報じた。米国滞在中の同師は事件への関与を否定している。
当局は事件に関連し計7543人の軍人や司法関係者を拘束し、約2万5000人の公務員を停職処分に、私立教育機関の教員約2万1000人の免許を取り消した。敵対するギュレン師の関係者が相当数含まれていると見られ「政治的追放」との批判も出ている。