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村田沙耶香さんの「コンビニ人間」に

記者会見の冒頭で記念撮影に応じる芥川賞に決まった村田沙耶香さん(右)と直木賞に決まった荻原浩さん=東京都千代田区で2016年7月19日午後8時35分、長谷川直亮撮影

直木賞に荻原浩さん「海の見える理髪店」

 第155回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞に村田沙耶香(さやか)さん(36)の「コンビニ人間」(文学界6月号)が、直木賞に荻原浩さん(60)の「海の見える理髪店」(集英社)が選ばれた。村田さんは初めての候補、荻原さんは5回目での受賞。

 贈呈式は8月下旬に東京都内で開かれ、正賞の時計と副賞の賞金100万円が贈られる。

 村田さんは千葉県出身、玉川大文学部卒。「授乳」で2003年群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー。「ギンイロノウタ」で09年野間文芸新人賞、「しろいろの街の、その骨の体温の」で13年三島由紀夫賞をそれぞれ受賞した。他の作品に「殺人出産」など。

 受賞作は、コンビニエンスストアで18年間アルバイトを続ける36歳の恋愛経験のない独身女性が主人公。結婚や出産をして当然の社会を理解できず、コンビニのマニュアルの中で生きがいを感じている。しかし、ある男の出現から危機に陥る。

 村田さんは学生時代以来、コンビニでアルバイトをしている経験を生かした。受賞決定の記者会見で「コンビニは自分の聖域なので、小説にすることはないと思ったが、なぜか書いてみようと思いました。コンビニに対する愛情を作品にできたことは良かった」と喜んだ。さらに「人間が好きという気持ちで書いているので、人間の面白さが表現できたらうれしい」と語った。

 荻原さんの受賞作は、遠くから来た客と理髪店の店主が過ごした一時を描いた表題作など6編からなる短編集。親子、夫婦の間で起こる喪失、すれ違いを安定した筆致でつづる。

 5度目の候補で直木賞受賞を果たした荻原さんは、チノパンに淡い水色のシャツというラフな格好で壇上に上がり「ほっとしています。肩の荷が下りたよう」と苦笑い。先月末、還暦になったばかりだが、「何も変わるところはないけれど、今年から新たなことにチャレンジしてみてもいいかな、と思っている」と意欲的。作家になる前はコピーライターだった。今の気持ちをコピーで、とムチャ振りされて、「『明日もまた書こう』それしかないと思います」。【内藤麻里子、鶴谷真】

選考委員の話

芥川賞「今でなければ書けない、興味深い作品として評価」

 芥川賞選考委員、川上弘美さんの話 コンビニという現代的な場所でしか生きられない、変わっているように見える主人公を設定し、SF的だ。周りの人間も活写することで、「普通」に対する批判になっている。全体に過不足なく描写され、ユーモアがある。21世紀の今書かれるべき、興味深い作品。

直木賞「ベテランの熟練の技を見せ、心打たれる内容」

 直木賞選考委員、宮部みゆきさんの話 圧倒的な読み心地の良さがあった。短編集は読み終わった後、内容を忘れることが多いが、荻原さんの作品は一つ一つ心に残り、読み終わった後思い起こすことができる作品だと評価された。ベテランの熟練の技を見せ、心打たれる内容だったという意味でも、最初の投票から高い支持を得た。

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