とくべつ企画:「上京して驚いたこと」を確かめる
2016年7月20日
秋田では「ふんわり食パン」ではなく「もちっとやわらか」なのだ!
「アベックトースト」、「フレッシュランチ」、「学生調理」、「コーヒー」、「バナナボート」。
心当たりのある方は秋田県やその近県のご出身なのではないか。 この名前、すべてパンの商品名であり(「コーヒー」もである!)、そしてすべてたけや製パンというメーカーが出している。 ※この記事はとくべつ企画、「『上京して驚いたこと』を確かめる」のなかの1本です。 読者の方からいただいた、上京して驚いたことの投稿をライターが現地へ行ってたしかめます。 > 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes たけやのパンが存在しない世界に驚きました秋田ご出身で県外に引っ越された方が驚いたこと。興味深いことに同様の投稿が2件あった。
秋田県出身で、結婚して関東在住です。
「バナナボート」といえばマリンスポーツなのがショッキングでした。 秋田の「バナナボート」と言えば、全国区でいう「まるごとバナナ」の様な洋菓子なのです。 そもそも、バナナボートを製造販売しているたけや製パンが全国区じゃない事を知りませんでした・・・。 ちなみにたけやはマーラーカオもおいしいです。 yama☆さん 秋田県秋田市出身です。
秋田ではヤマザキパンはたけやパンでした。 なので、「春のパン祭り」も「たけや春のパン祭り」だったように記憶しています。ヤマザキといえばデイリーのヤマザキでした。 上京し、タケヤパンが存在しない世界に驚きました。 大阪出身の夫からは訳が分からないと言われますが、この製パン会社の地方別問題は多々あるのでしょうか? ymkさん 「地元では全国区だと思っていたメーカーのパンが、県外に出たら売られていなくて驚いた」話といえば青森の工藤パンが一部で有名であり(青森では車を走らせていると「工藤パン」の看板がたくさんかかげられているのに気づく)常々気になっていた。
秋田ではそれが「たけや製パン」なのか。 確かめるべく秋田へ。一番最初に入ったスーパーで早速たけや製パンの「アベックトースト」(右)と、お、工藤パンの「イギリストースト」(左)も。まぶしいかな、これぞ東北のパン勢力…!
「バナナボート」とは死ぬほど食べるもの秋田出身である当サイトライターの高瀬克子さんにもたけや製パンについて聞いてみた。すると投稿にもあった「バナナボート」の話が。たけや製パンといえば高瀬さんにとっては「バナナボート」なんだそうだ。
「うまいです! むかし死ぬほど食べました。ぜひ食べてほしい」と力強い。 で、到着するなり探したらスーパーのチルドデザートコーナーにシリーズそろってこの陣取りぶり
確かにこの光景に幼少からなじんでいれば、「バナナボート」といえばお菓子でありまさか地球上でもっともうかれたマリンスポーツのことを指し示すとは思いもしないだろう。
早速買ってイートインスペースで食べてみた
わ、なんだこのスポンジのきめの細かさは。スポンジじゃないなこれ「スフレ」だ
ちょっと待てちょっと待て、これは確かにおいしい。ちゃんとしたお菓子屋さんで売ってるレベルのやつだ
さらにスーパーやコンビニを歩いてみればどこへ行っても「たけや」のパンが並んでいる。関東生まれの関東育ちの私には初見のパンばかりなのである。
なるほど、これが秋田たけや帝国か…! 「ランチパック」が「フレッシュランチ」?さて、そうして秋田駅を中心にスーパーやコンビニを練り歩くなかで、おやと思う商品にもぶつかった。
これを見てほしい。 分かりやすく山崎製パンの「ランチパック」の陳列棚なのだが、そのなかに…「フレッシュランチ」…?
で、見るとたけや製パンの製品のようである。
ほかにも関東住みの私にとってはヤマザキのパンとしてなじみのある「北海道チーズ蒸しケーキ」がたけやの名前で売られており、さらにヤマザキでいうところの「ふんわり食パン」に似た雰囲気のパッケージの商品がたけやの名のもとに「もちっとやわらか」という商品として並んでいる。 上、山崎製パン 下、たけや製パン
これはなかなかのパラレルワールドだ。置いてあるパンのメーカーが違う。似てるけどちょっと違う、景色(パン)。
違いとしては些細かもしれないがダイレクトに日常にかかわってくるだけに違和はじわじわと来るはずだ。じわじわと違いが身にしみ、しかしまたじわじわと慣れていく。転居とは文化を季節の変わり目のように味わうものなのかもしれない。 というか、ほんとにこれどういうことなんだろう。 ここまで来たからにはお伺いしますぞ、たけや製パンその本陣へ…! 秋田で創業、今年で66年目こちらが秋田市にあるたけや製パンさん
工場の隣にはアウトレットの販売店もあった。いいですねいいですね…!
この日は大雨。頭のなかはパンでいっぱい、期待で目を血走らせた上にそこそこ雨にぬれた、あれ? ひょっとしてこのひと妖怪なのかな? 的なことになっている私を快く迎えてくださったのは企画課の加藤勇人さんだ。
よろしくおねがいします!
「ランチパック」と「フレッシュランチ」の関係性などとにかく聞きたいことはいろいろあるのだが順を追ってお話をうかがっていこう。
まずは何しろなんでここまで秋田にがっちりと根付き県の人々が全国展開のメーカーだと思うくらいの認知が深いかである。 (以下緑の文字は加藤さんのお話)「弊社は昭和26年の2月に創業いたしまして今年66年目を迎えているんですけれども、かつて秋田には3つパン屋さんがありました。 それを昭和55年に弊社が吸収して現在にいたってるんです。秋田でパンといえばうちが一社しかなかったということで浸透してるのかな、という気がいたします」 個人商店であった製パン店が大規模な流通メーカーとして台頭しはじめた時代、そこを秋田でぬきんでたのがたけや製パンだったのだ。 社屋入り口の胸像こそ創業者の武藤茂太郎氏(訪ね先の会社で胸像を見るのは尊い時間ですよね)
さらに秋田にこれでもかと根付いてきた理由はもう一つあるようだ。
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