ポケモンGoの「商標登録問題」を検証する

商願2015-86693

ポケモンGoが本日に日本でリリースとの噂がありますが、ここでは、日本でのリリースが海外よりも遅れたのは商標登録出願が拒絶されたからであるという説を検証してみます。

ポケモンGoのロゴ商標登録出願(商願2015-86693)は2015年9月8日に出願されていますが、確かに、2016年1月22日付で商標法8条1項または4条1項11号による拒絶理由通知(暫定的な拒絶)が発行されています。

8条1項 同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について異なつた日に二以上の商標登録出願があつたときは、最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。

4条1項11号当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(略)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

要は、「他人」の類似先登録があるので登録できないということです。600円自腹で払って審査経過書類を取り寄せて調べました。この「他人」の類似先登録とは、4222424号(ポケモンゲーム)、4222426号(ポケモンロクヨン)、4232183号(ポケモンクラブ)、4236109号(ポケモンツー)、4236880(ポケモン64)号、4248073号(ポケモン)、等々です。全部、任天堂による正規の出願なんですが、任天堂株式会社、株式会社ゲームフリーク、株式会社クリーチャーズの3社による共同出願になっています。

おそらくは契約の関係でポケモン関係はこの3社の共同出願にしていると思うのですが、なぜか、今回のポケモンGoのロゴ商標だけは任天堂の単独出願になってました(単純ミスだと思います)。複数の出願人(権利者)がいる時は、全員が一致しないと「他人」と扱われてしまうのが特許庁の運用です。出願人名義変更の手続をすれば済みますのでたいした問題ではありません。実際、その後、変更手続が行なわれているのでまもなく登録されるでしょう。

余談ですが、この「他人」の判断には住所も使われますので、商標登録後に出願人が引越し、登録の方の住所変更を忘れたまま、新住所で別の類似商標を出願したりすると、住所が異なることから「他人」と判断され、自分の登録で自分の出願が拒絶されてしまうケースがたまにあります。これも、拒絶理由通知がきてから住所変更届けを出せばよいだけなのでさほど重大な問題ではありません。

ところで、先日新聞沙汰になったような第三者による勝手出願が問題になったのではないかとの憶測もありましたが、「ポケモン」は超著名商標であり、これに類似する商標を任天堂以外の第三者が出願しても(仮にちゃんと料金を払ったとしても)登録されることはないので、これは大きな問題ではありません(せいぜいこちらの登録がちょっと遅れて困るくらいです)。

それからこれもたまに聞かれる誤解ですが、商標登録が完了するまでは、その商標を使ったビジネスが行なえないなんてことはありません。世の中で使われている数多くの商標(たとえば、近所のそば屋の店名)が全部商標登録されているわけではないことを考えれば明らかです。もちろん、他人の類似商標の使用を排除する、および、他人から商標権侵害で訴えられないことを確実にするためには、商標登録が完了していることが好ましいですが、「ポケモン」関係の場合はこれが問題となることはないでしょう。そもそも、今回、商標登録を待たずに日本でサービス開始になることからもこれは明らかです。

まとめると、1)ポケモンGoの商標登録が遅れたのはちょっとした手続ミスでたいした問題ではない、2)どっちにしろ商標登録が遅れたことを理由にサービス開始が遅れるなんてことはない、ということです。