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【緊迫・南シナ海】
中国、「南シナ海封印」に失敗 厳しい国際世論に直面、反論余儀なく ぎりぎり名指しは回避
「南シナ海問題について論評を発表した国がいくつかあったため、中国は立場を明確にする必要がある」。中国外務省によると、李克強首相は16日のASEM全体会合でこう切り出し、「中国の南シナ海の領土主権と海洋権益はいかなる状況でも仲裁裁定の影響を受けない」と訴えた。
裁定が示されてから初めての大型国際会議で、中国は南シナ海問題の議論を封印しようとしたが、多くの国が高い関心をみせたことで反論せざるを得ない状況に陥った。
会議に出席した李氏や王毅外相は舞台裏で、経済的なつながりを背景に、2国間協議を利用して支持取り付けに奔走した。こうした動きにもかかわらず、採択された議長声明は、中国を牽制する色彩の濃い内容となった。ただ「南シナ海」の文言や仲裁裁定には直接言及せず、中国としてはぎりぎりのところで踏みとどまった格好だ。
15日に行われた日中会談では李氏が安倍晋三首相に裁定の受け入れを直接求められた。EUのトゥスク大統領も裁定について「紛争解決に向けてよい流れをつくるだろう」と高く評価している。中国は厳しい国際世論に直面している。(ウランバートル 西見由章)