中国の動向は世界経済の行方を左右する主な要因の一つだ。先週発表された4~6月期の経済成長率は前年同期比6・7%だった。政府の目標水準には達したが、心配なのは民間企業の投資が急に減速している点だ。

 国有企業中心の古い体質を改め、市場の機能をさらに生かす改革を進められるかどうか、正念場を迎えている。

 1~6月の上半期では、国有企業の投資が前年同期比で23・5%も伸びた。これに対して民間は2・8%増にとどまり、6月だけだとマイナスになった。

 偏りの原因は、政府が景気下支え策として打ち出した公共事業にある。

 公共事業に参入し、受注をはじめ取引にかかわるうえで優先されているのは国有企業だ。銀行も融資で国有企業を優遇しがちである。政府の後ろ盾があり、潰れる心配がないためだ。

 一方の民間企業には様々な見えない参入障壁があると、政府自身も認めている。競争力の低い国有企業が支えられ、民間企業の成長が阻まれている。

 その構図は借金の残高にも表れる。国際通貨基金(IMF)によれば、中国の企業債務の国内総生産に対する比率は145%に達する。日本でいえば90年代半ばのバブル崩壊後の水準で、かなり高い。この債務の55%を国有部門が占めるが、生産額は22%にとどまる。非効率なところに資金が流れ込んでおり、銀行の不良債権問題が深刻になるおそれがある。

 中国の民間企業は苦難の歴史を歩んできた。毛沢東時代に全面否定され、80年代に規模の小さなものから認められた。少しずつ力をつけ、企業家らが様々な差別の撤廃を政府に働きかけてきた。憲法改正で民間部門の利益を保護することがわざわざ明記されたが、それは民間企業が軽視されがちな状況のゆえでもある。

 国有企業は共産党や政府と、政策や人事で長年にわたり深くつながっている。改革は容易ではないだろう。それでも習近平(シーチンピン)政権は「市場が資源配分の中で決定的役割を果たすようにする」との方針を掲げてきた。

 最近は鉄鋼などの過剰設備問題を解決しようと、痛みを覚悟するよう訴えてもいる。ならば、生産性の低い国有企業の投資は抑えるよう誘導するのが先決ではないか。

 市場経済は万能ではない。だが、市場の限界や失敗を語る前に、まずは機能するのを妨げている要因を取り除いていくべきだろう。民間の成長なしに中国経済の明日は描けない。